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経済観測

毎日新聞経済面に連日連載の経済コラム。経営者や経済評論家らが独自の視点で、経済の今とこれからを展望する。

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獲れたものが獲れないとき=気仙沼ニッティング社長・御手洗瑞子

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御手洗瑞子 気仙沼ニッティング社長
御手洗瑞子 気仙沼ニッティング社長

 東京で生まれ育った。子どものころ、農業や漁業をなりわいとする大人は身近にいなかった。そのためか、テレビで、台風でリンゴが落ちてしまったと落ち込むリンゴ農家のニュースをみても「手塩にかけて育てたリンゴが落ちてしまったなんて、悲しいだろうなあ」としかわからなかったし、不漁のニュースを見ても「漁に出かけたのに魚がいなかったなんてかわいそうだなあ」としか想像できなかった。不作や不漁という事態が、「悲しい」を超えて、農家や漁師にとって生活に関わる一大事であると理解できるようになったのは、もっと後になってからのことである。

 さらに自らの不明を恥じたのは、港町である気仙沼に移り住んでからだ。町のあらゆる仕事がなんらかの形で水産業に関連しており、主力魚種の不漁は漁業者のみならず、地域経済全体に打撃を与えるものであることを知る。魚が水揚げされなければ、流通業者の仕事が減り、魚を詰める箱や氷を製造する会社も商売を失い、水産加工会社には原料の魚が入らず、新鮮な魚を売りにする観光業も打撃を受ける。「魚が獲(と)れる」ことを前提…

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