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安倍政権が残したもの

安倍政権が残したものは何か、どう向き合えばいいのでしょうか。識者とともに考えます。

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タカでなく「平々凡々なお坊ちゃま」 青木理氏が指摘する、深刻な負の遺産

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ジャーナリストの青木理さん=東京都千代田区で2020年4月6日、長谷川直亮撮影
ジャーナリストの青木理さん=東京都千代田区で2020年4月6日、長谷川直亮撮影

 安倍晋三首相は、戦争の放棄を定めた憲法9条を軸に憲法改正を最大の課題に掲げ、タカ派的な姿勢をとり続けてきた。そのような政治的姿勢はどのように形成され、日本社会にどのような影響を与えたのだろうか。政権をウオッチし、安倍首相を祖父、父の代からたどった評伝「安倍三代」の著者でもある、ジャーナリストの青木理さん(53)に聞いた。【大迫麻記子/統合デジタル取材センター】

政治的な志、見えなかった青年期

 ――青木さんは安倍首相の学生時代の友人や恩師、会社員時代の恩師など多くの人に取材をされましたが、安倍首相のタカ派的な思想はどのように形成されていったと思われますか。

 ◆若き日の安倍晋三氏を知る人を、多数取材しましたが、安倍青年から、政治への志を聞かされたという人は、ついに一人もいませんでした。それどころか、政治的な話を交わした人すらほとんど見当たらない。

 作家の三島由紀夫が1970年11月、自衛隊に「決起」を呼びかけて割腹自殺しました。多少なりとも政治に関心を抱いていれば、特に右派ならば相当な衝撃を受けたはずですが、当時高校生だった安倍青年に友人が話を振っても、「ふーん」という程度で興味を示さず、議論にもならなかったそうです。

 端的に言えば、「名門政治一家」に生まれただけの、平々凡々なお坊ちゃまにすぎません。特段の政治思想らしきものがあったわけでもなく、優秀でもないが、ワルでもない。いくら取材をしても私は、彼に人間的な魅力を感じませんでした。憲法改正を目指すと訴え、特定秘密保護法なども強引に成立させていた政権の主なので、「いったい何者なのか」と取材していたのですが、若き日の実像を知るほど拍子抜けしました。

 しかも、政治家としての知性を蓄えようとした気配もない。大学時代の彼を知る教員は、卒業論文で彼が何を書いたかも覚えていないし、ゼミなどの場で何か積極的に発言した記憶すらないというのです。憲法改正を訴えて政権の座についたのに、憲法学の泰斗である故・芦部信喜(のぶよし)東大教授を知らなかったり、「個人の尊重」を定めた憲法の条文を問われ、13条と正しく答えられなかったことが話題になりましたが、さもありなんと、驚きませんでした。

時流に乗って「右派のプリンス」に

 ――そのようなおとなしい人が、政治家になってから強権的な政策を展開しようとしていたのはなぜでしょうか。

 ◆会社員時代の上司は「子犬がオオカミと群れているうち、自…

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