書の美 平心二大字 よく利いた渇筆=島谷弘幸

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 益田孝(1848~1938年)は、近現代に活躍した実業家・茶人である。幼名は徳之進。鈍翁の号で知られる。父は、佐渡奉行下役を務め、その後箱館奉行となった鷹之助である。父が外国奉行支配定役となり江戸詰めとなった。徳之進は外国語修習見習生を経て、通訳官としてアメリカ公使館に勤務した。その後、遣欧使節団に加わり、ここで幅広い世界観を養った。維新後には横浜の貿易商に事務員として勤めた後に大蔵省官吏となった。退官後に、三井物産の設立に関わり社長となり、さらに三井鉱山合資会社の基礎を築くなど三井財閥を支えた。

 茶人としても著名で、東西の大茶会である「大師会」「光悦会」の設立にも賛助し、財界の茶道の盛行に寄与した。また、仏教美術・古筆などの大コレクターであった。本願寺の鏡如(大谷光瑞)が女子宗教大学(現在の武蔵野大学)設立のために、「本願寺本三十六人家集」の「伊勢集」と「貫之集下」の分割を決意したのも、鈍翁らの助言を受けてのものであった。この分割によって、茶席を飾る掛け幅の名品が生まれ、古筆の愛好熱は高…

この記事は有料記事です。

残り395文字(全文847文字)

あわせて読みたい

注目の特集