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#やまゆり園事件は終わったか~福祉を問う

植松聖死刑囚の死刑判決が確定した相模原障害者殺傷事件。日本の障害福祉政策の問題点と、解決の道筋を探ります。

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#やまゆり園事件は終わったか~福祉を問う

②「いつかこうなると思った」 元職員の予感の背景にあった「虐待」

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引き戸の取っ手にガムテープがはられた神奈川県立愛名やまゆり園の居室ドア。中(右手前)にいる入所者はミトンをはめられ、自分では開けられない状態だったという。県は虐待にあたるかどうか調査中=関係者提供
引き戸の取っ手にガムテープがはられた神奈川県立愛名やまゆり園の居室ドア。中(右手前)にいる入所者はミトンをはめられ、自分では開けられない状態だったという。県は虐待にあたるかどうか調査中=関係者提供

 「職員が利用者に暴力をふるい、食事を与えるというよりも流し込むような感じで利用者を人として扱っていないように感じた」。神奈川県立津久井やまゆり園(相模原市)について、入所者19人を殺害した元職員の植松聖死刑囚(30)の判決は「証拠上認められる前提事実」でこう触れている。元職員の証言や県の調査によって園での支援の実態が、最近明らかになってきた。【上東麻子、宇多川はるか、塩田彩/統合デジタル取材センター】

「許せないが、分かる気もする」と元職員

 「やまゆり園の職員の中には、『(利用者に)税金を費やす必要があるのか』と話す人もいて驚きました。食べ物を全部ぐちゃぐちゃに混ぜてスプーンに山盛りにして、利用者さんの顎(あご)を持ち上げて口に押し込む職員もいました。植松死刑囚はもちろん許せませんが、彼が裁判で話していたことは、分かる気もするのです。事件が起きて最初に感じたのは、『いつかこういう事件が起きると思っていた』ということです」

 数年前まで津久井やまゆり園で働いた元職員は、「(利用者に)税金を費やす必要があるのか」と差別的な発言をする同僚がいたと取材に明らかにした。職員が利用者に暴力をふるう場面も見たが、職員の上司は「見て見ぬふり」だったという。

 入所者のために毎日、真面目に働いている職員も多いだろう。裁判では凄絶(せいぜつ)な事件現場に居合わせながら、必死で入所者の命を守ろうとした職員の調書も読み上げられた。事件後も入所者の日々の世話に奔走した職員たちがいる。私たちが取材した職員たちも、仕事の難しさと同時にやりがいも語ってくれた。

 しかし、やまゆり園とその周辺では入所者への虐待疑惑が相次いで浮上している。

 津久井やまゆ…

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