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戦後75年

軍務拒否で禁錮刑、迫害 悲運の反戦医師、小説に 埼玉の作家・長洋弘さん

長洋弘さん=2015年、中山信撮影

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「あの時代 繰り返さない」

 埼玉県吉見町在住の写真家で作家、長洋弘(ちょうようひろ)さん(73)が、新刊「小説 末永敏事(びんじ)」(燦葉出版社)を発刊した。大正~昭和期に反戦平和を貫いた医学者の生涯を2年半かけて執筆。「優秀な結核医だった末永は反戦を唱えただけで悲運の人生をたどった。あのような時代が二度とあってはならない」と話している。【中山信】

 末永敏事は1887(明治20)年に長崎県で生まれた。長崎医学専門学校(現長崎大学医学部)を卒業後、台湾で医師として働いた後、1915(大正4)年に米国留学。当時はまだ有効な治療法がなく、死に至る病として恐れられていた結核をシカゴ大などで研究した。米医学専門誌に次々と論文を発表するなど10年にわたり先駆的な研究を続けたが、アジアからの移民を全面禁止する米国の新移民法(通称排日移民法)成立を受けて25(大正14)年に帰国した。

 末永は青山学院中等部(東京)時代に内村鑑三(1861~1930年)の影響でキリスト教徒となり、反戦思想を持っていた。茨城県内の結核療養施設で働いていた38(昭和13)年、国家総動員法に基づく職業能力申告令に反戦主義のため軍務を拒否する旨の文書を知事に送り、陸海軍刑法違反で禁錮3カ月の刑を受けた。出所後も特高警察などの監視と迫害を受け続けたとみられ、45年8月に死亡したとされるまでの足取りはわからず、遺骨や墓所も不明のままだ。

長洋弘さんの新刊「小説 末永敏事」=2020年8月27日午後2時17分、中山信撮影

 末永の生涯は、長崎新聞社の森永玲さんが連載記事をまとめた伝記「『反戦主義者なる事通告申上げます』―反軍を唱えて消えた結核医・末永敏事」(花伝社)を2017年に出版したことで知られるようになった。功績を顕彰する「末永敏事平和記念館」も18年、故郷の長崎県南島原市に設立された。

 長さんは、太平洋戦争敗戦後もインドネシアに残った元日本兵の足跡の記録をライフワークとして多数の著書を出版。戦前のバリ島で活躍した日本人をモデルにした小説も著しており、17年11月、編集者から「末永敏事の生涯の空白部分を小説の形で埋め、さらに広く紹介したい」と相談された。長さんは、改めて医学研究論文を探し出したり、どうしても分からない空白期間は当時の社会状況に即した想像を交えたりして「ノンフィクション的な小説」を書き上げた。

 四六判315ページ、1980円。問い合わせは燦葉出版社(03・3241・0049)または長さん(0493・54・8250)。

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