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シライケイタ 韓国の国民的詩人・尹東柱を巡る舞台「星をかすめる風」演出 演劇で日韓に橋

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シライケイタ=東京都新宿区で2020年9月3日、濱田元子撮影
シライケイタ=東京都新宿区で2020年9月3日、濱田元子撮影

 劇作家、演出家、俳優として活躍するシライケイタ(劇団「温泉ドラゴン」)に熱い視線が注がれている。なかでも近年は、日本と韓国にかかわる人間の物語を毎年のように上演。今年も9月12日初日の劇団「青年劇場」の公演を皮切りに、10月以降も名取事務所の公演など、韓国関連の芝居が続々控えている。“社会派”と言われるが、当人は「意識していない」という。「なんだか知らないけど出合ってしまったから」。人や土地との縁が創作の原動力と明かす。

きっかけは「birth」

 シライが日韓にかかわる物語を書くきっかけになったのは、オレオレ詐欺をモチーフに社会の底辺でもがく男たちを描いた温泉ドラゴンの「birth」(シライ作)の上演だという。2013年の東京・上野ストアハウスでの上演時に、劇場側が韓国の劇団「コロモッキル」を同時に招へい。それが縁で14年、ソウル公演が実現した。15年の韓国3都市ツアーと、公演を重ねる中で韓国に絆と興味が生まれていった。ツアー先の密陽(ミリャン)国際演劇祭では戯曲賞を受賞し、日本よりも韓国で先に「賞」という形で評価された。

 そして15年に書いたのが朴烈と金子文子を主人公にした「烈々と燃え散りしあの花かんざしよ」だ。「せっかくだからと日韓のネタがないかと探していた。朴烈は大逆罪で逮捕された人物で、そこで初めて“社会派”って言われたんですよ(笑い)。国を超えたおおいなる愛の物語を探していただけなんですけどね」

 もともとは俳優として演劇活動を始めたシライだが、その後も、朝鮮王朝最後の王女である徳恵翁主を題材にした「或(あ)る王女の物語~徳恵翁主~」、大阪の在日コリアンを題材にした「SCRAP」を執筆。また、韓国の劇作家パク・クニョンの「代代孫孫」「満州戦線」を演出した。

 「いろいろ興味を持って、勉強したり調べたりしながらお芝居になりそうな題材を探していくうちに、点と点が次第に線となり、もっと興味が広がっていくという感覚がありました」

「政治的立場を超えて、人と人はつながれる」

 原点はもう一つ。大学時代にさかのぼる。1996年にソウルで開催された世界学生演劇祭に日本から代表として参加。初めて韓国人と交流して、植民地時代など日韓に横たわる歴史も勉強した。さらに2002年、日韓共催のサッカーW杯と同時期に、韓国人の演出による両国の俳優が出演する舞台が、日韓で上演され、そこに参加した。

 「本番中に日韓戦があって、もちろんそれぞれの国を応援するけど、俳優は1カ月一緒に過ごすうちに、お互い相手の立場に立っているんですよ。例えば、日韓戦だけど日本が点を入れると(韓国の俳優が)『おめでとう』とかね。政治的立場を超えて、人と人はつながれるよな、という体験をその時にした」

 それら…

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