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安倍政権が残したもの

難民・移民に「命の選別」 日本社会の排他性に影響? フォトジャーナリスト・安田菜津紀さん

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フォトジャーナリストの安田菜津紀さん=ダイアローグフォーピープル提供
フォトジャーナリストの安田菜津紀さん=ダイアローグフォーピープル提供

 安倍晋三首相が政権の座にあった約7年8カ月間は、日本とつながりを持つ外国ルーツの人々と日本社会の摩擦がクローズアップされた時期でもあった。技能実習生など日本で働く外国人の非人道的な扱い、極端に低い難民認定率、社会的問題に声を上げる外国系の人々に集中するネット上での批判--。社会で強まる非寛容な姿勢や排他的傾向と、政権の姿勢は関連しているのだろうか。難民や移民の問題に詳しいフォトジャーナリスト、安田菜津紀さん(33)の見方を聞いた。【和田浩明/統合デジタル取材センター】

議論避けた外国人労働者受け入れ政策

 ――安倍政権の移民・難民政策をどう受け止めていますか?

 ◆適切な議論を回避し、自らの方針を押し進めようとする傾向があったと思います。その一例が、外国人労働者の受け入れ拡大を巡る対応です。

 出入国管理及び難民認定法などの改正を巡る議論が国会で進んでいた2018年後半、外国人技能実習生の人権侵害とも言える劣悪な労働環境の問題が浮上しました。17年には7000人以上が失踪していましたが、法務省は当初、「より高い賃金を求めて」87%が失踪したと説明。後にその理由は「低賃金」で、比率も67%だったと修正しました。当初の説明は、あたかも実習生がお金目当てである印象を与えたと考えます。

 法務省はまた、審議の過程で、失踪技能実習生からの聞き取り内容を記載している「聴取票」も開示しましたが、個人情報保護などを理由にコピーを認めず、野党議員らは手書きで書き写しました。

 こうした対応を見ると、政権として法案の審議を早く進めるために、適切な議論を行うために必要な資料の提供も不十分だったという印象です。同じような審議過程の不透明さ、不可解さは、他の重要法案の場合でも見られたもので、安倍政権の姿勢全般に言えることだと思います。

改善しない非正規滞在者の入管長期収容

 ――難民申請の認定率は1%未満が続き、入管施設での長期収容も問題視されています。

 ◆難民認定比率の低さにしても施設への長期収容にしても、安倍政権の前から問題はありました。しかし、安倍さんは約7年8カ月も首相を務めたわけで、改善する余地や時間はあったはずです。

 例えば、14年3月に、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)に収容されていたカメルーン人男性が亡くなりました。遺族が国などに損害賠償を求めた裁判で20年5月に公開された監視カメラの映像によると、男性は「死にそうだ」などと言いながら床を転げ回って苦しんでいましたが、この状態でも医師の治療は受けられませんでした。

 この事件の後も処遇改善を求めるハンストなどが各地の入管施設で相次ぎます。19年6月には、大村入国管理センター(長崎県)に3年7カ月も収容されていたナイジェリア人男性が「飢餓死」する事件まで発生しました。収容期間の長さや処遇については、国連関連機関から再三改善を求められて…

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