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余録

「瓜踏んで瓜盗人の転けたりな」は…

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 「瓜(うり)踏んで瓜盗人(ぬすっと)の転(こ)けたりな」は明治の作家、尾崎紅葉(おざきこうよう)の句である。瓜畑に入り込んだ泥棒が、当の瓜に足をとられて転んだというおかしな光景だが、瓜盗人は瓜そのものとともに夏の季語となっていた▲歳時記を見ると今も「瓜番」、つまり瓜畑の番が季語として載っていて、瓜盗人はその副題である。マクワウリやスイカが貴重だった昔、畑に番小屋を建て不寝番を置いていた。そのアルバイトを経験した俳人も結構いたようである▲「足早き瓜盗人に驚きぬ 松藤夏山(まつふじかざん)」は泥棒とはち合わせしたのか。逆に「瓜盗人どうしてゆつくり歩くのか 岡田史乃(おかだ・しの)」は現れた泥棒におびえる瓜番の心中かも。「瓜番へ闇を飛び来し礫(つぶて)かな 守能断(しゅのうだん)腸(ちょう)花(か)」という怖い句もあった▲ブドウ番ならぬ防犯カメラは、ブドウ泥棒が切り取ったシャインマスカットを悠然(ゆうぜん)と袋に入れて持ち去る姿を記録していた。東京都清瀬市の農園での出来事だが、収穫の秋を迎えたナシやブドウの各産地では盗難事件が続発している▲群馬県や茨城県では先月からシャインマスカットやナシの大量盗難が相次ぎ、福島県からはJAなどのブドウ盗難防止キャンペーンのニュースも伝わる。苦労して育てた果実の収穫直前での盗難に、農家の落胆や憤りはいかばかりか▲北関東では飼育中の子牛や子豚の謎の盗難も相次いだ今年だった。いく分ユーモラスでもあった昔の句の大方の瓜盗人とは違い、闇からの礫のような不気味な悪意ばかりが心を騒がせる令和の農産物泥棒である。

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