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三月書房が店を開けてる? 6月閉店の名店、シャッターに「だまし絵」 京都

「現実とうその境目のセンスが大事」と宍戸立夫さん。うそのシャッター絵に実際の看板やガラス戸、自転車を組み合わせる演出に余念がない=京都市中京区で2020年8月27日午後3時14分、南陽子撮影

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 6月に閉店した「三月(さんがつ)書房」(京都市中京区)が“再開店”し、往来の話題を呼んでいる。寺町通に面したシャッターにかつての店先の光景を再現し、配達に使っていた自転車を止め、あたかも開店中のように見せる「トリック・アート」。3代目店主の宍戸立夫さん(71)は「あれ、閉店したはずじゃなかったっけ?と面白がってくれたら」とほくそ笑む。【南陽子】

 三月書房は、小出版社が手がけた人文科学の専門書や文芸書など、一家言のある品ぞろえで知られた。通信販売を残して6月11日から「定休日は毎週、月曜・火曜・水曜・木曜・金曜・土曜・日曜」となった。創業から70年続く“知の小宇宙”に、青年時代の思い出を重ねる文化人や研究者は少なくなく、年代物のシャッターまでもが、ビジュアル誌「別冊太陽」に“味わい深い”と紹介されたことがあった。

宍戸さんがマジックペンで営業時間を書き入れていたかつてのシャッター(2020年5月撮影)=京都市中京区で2020年5月11日午後1時58分、南陽子撮影

 とはいえ、宍戸さんは「小汚いシャッターが閉まったままでは景色が良くない」。デザイン実習に協力している近くの京都市立銅駝美術工芸高校の生徒に、しゃれた書店があるように見せる「だまし絵」を描いてもらおうか……と考えていた7月半ば、店のファンで生物学者の福岡伸一さんから「店の看板を譲ってほしい」と連絡があった。

 だまし絵のアイデアを話し、看板は待ってほしいと返したところ、福岡さんは「かつての三月書房のたたずまいを正確に再現」できるよう、写真をシャッターに貼り付けてはどうかと提案。福岡さんが写真家から写真をもらい受け、17世紀オランダの画家フェルメールの絵画のような陰影加工も手配した。かかった費用も宍戸さんと折半したという。

シャッター絵にも登場する「つげ義春初期傑作短編集」の宣伝ポスター。かつては天井近くに掲示されていた(2020年5月撮影)=京都市中京区で2020年5月13日午後1時0分、南陽子撮影

 宍戸さんは「現実とうその境目のセンスが大事」。3枚のシャッターのうち真ん中の1枚はしまって本物のガラス戸を見せ、自転車も毎日わざわざシャッターの前に動かしている。間近で見てもよく分からないものの、少し離れると、福岡さんの代表的著作や、漫画家つげ義春の短編集の宣伝ポスターなどがある「かつての店先」が浮かび上がってくる。

 12月に廃業届を出す予定の宍戸さんは「芸術作品として評価し『芸術新潮』に載せてくれへんかなあ」。福岡さんは「私の意図するところは、個性ある小さな本屋さんがどんどん消えていってしまう寂寥(せきりょう)感と、時代の趨勢(すうせい)に対するわずかながらの抵抗です」と打ち明ける。

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