「女・男の気持ち」(2020年9月3~9日、東京・大阪・西部3本社計21本)から選んだ「今週の気持ち」は、大阪本社版9月3日掲載の投稿です。
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<今週の気持ち>
12歳の反撃 香川県観音寺市・伊丹和子さん(自営業・71歳)
新型コロナに収束の気配はなく、日々緊張の中にいる。私は学習塾を開いているが、感染対策に心を砕き、一時は、続けることは無理なのではないかと思われた。
6月の再開から、どうにかしのいで夏は過ぎ、酷暑ながら、暦の上では秋となった。子どもたちは、以前との違いは感じられず、何事もないように元気に通ってくる。
ある日の始業前、たまたま小学6年の男子数人だけがいた。雑談しているうち、コロナの話題になった。
「近くで患者が出てるし、だんだん包囲されている感じがするなあ」
マスクを外している子に、「マスクは外すなよ。絶対ダメだよ」と忠告する子。
「暑いからなあ」「命とどっちが大事なん?」
「なぜ人は死ぬのかなあ」
そのとき、一人の子が誰に言うでもなく、机に視線を落としたままぼそっと言った。
「俺はまだ死にたくない。恋愛もしたいし」
不思議に、しんと静かになった。一瞬の静寂の後、「いいぞ」の声をきっかけに、みんながパチパチと手をたたきだし、そして、わーっと一斉に拍手が起きた。
勉強が始まったのは、しばらくしてからだった。
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<担当記者より>
新型コロナウイルスにより、世の中の風景は一変してしまいました。何より感染拡大の抑止が肝要ですが、店舗の営業制限や往来の自粛は経済活動に大きな打撃を与えています。「この先、もっとひどくなるのでは」。そんな不安を抱えている人たちは、かなりの数に上るでしょう。
大人たちの不安は、子どもたちにも伝わっているはず。でも、実際のところはどうなのでしょう? 投稿に描かれた男の子たちのリアルな会話に、ハッとしました。「恋愛もしたいし」。思春期を迎えた男の子の心情の発露、そして共感の拍手が湧いた学習塾の教室。「ああ、そんなことまで思っているんだ」と切なくなりました。一刻も早く新型コロナの脅威を克服して、人々に笑顔が戻ることを祈ります。
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