メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

原点に掲げた復興 7年8カ月かけて「まだ入り口」 安倍政権の実績と宿題

東京電力福島第1原発構内を視察する安倍晋三首相=福島県の同原発で2019年4月14日(代表撮影)

 安倍晋三首相は8月の辞任表明記者会見で、政権のレガシー(遺産)を問われ、いの一番に東日本大震災の復興を挙げた。今月9日に復興に関する与党提言を受け取った際も「(旧民主党からの)政権奪還の原点は『東北の復興なくして日本の再生なし』。継続的に取り組まなければならない」と強調した。11日で震災から9年半。うち7年8カ月は安倍政権が復興政策や東京電力福島第1原発の事故処理を担った。被災地では何が進み、何がないがしろにされたのか。復興に関わってきた人たちに聞いた。【関谷俊介、金森崇之、竹内良和】

 「国は現場を見ず、大上段から被災状況の数字だけを見て施策を打ってきたのではないか」。震災で壊れた自宅に住み続ける在宅被災者を支援している宮城県石巻市の一般社団法人「チーム王冠」の伊藤健哉代表は決して納得していない。

 安倍首相は政権発足以来、「現場主義」を掲げ、復興庁によると7年8カ月間で岩手、宮城、福島の3県の被災地を計45回訪問した。だが、訪問先は、自治体がお膳立てした復興の成功例ばかりを選んでいる。伊藤さんの目にはそう映った。年度ごとの訪問回数をみても、最多は2014年度の10回で、15年度は6回、18、19年度はいずれも3回と減っていく。

 震災当時、最大52万円の補助が出る災害救助法の応急修理制度を使って自宅を修繕した在宅被災者は、修理に数カ月を要したり、資金が足りず浴室やトイレを直せなかったりした場合でも、制度上は自宅を再建したとみなされ、仮設住宅に入居できなかった。

 伊藤さんは、国会議員や地元県議に被災者の窮状を説明して改善を訴えたが、内閣府が今後の災害について自宅を修繕しても仮設住宅への一時入居を認める運用に見直したのは今年7月になってから。「風呂もトイレも壊れた自宅に何年も住み続けた被災者がいる。なぜ、問題解決に9年以上もかかるのか。安倍さんは仮設住宅には足を運ぶのに、どうして在宅被災者への想像力を持たず、思いをはせないのか」

 閣僚の相次ぐ失言や更迭も被災地の失望感を強めた。安倍首相は「閣僚全員が復興相」と被災地重視の姿勢を強調したが、14年6月には石原伸晃環境相(当時)が、原発事故の除染土を保管する中間貯蔵施設建設を巡る自治体交渉について「最後は金目でしょ」と発言。今村雅弘復興相(同)は17年4月、震災が「まだ東北だったから良かった」と述べ、事実上更迭された。19年4月には桜田義孝五輪担当相(同)が自民党議員のパーティーで「復興以上に(議員が)大事」と発言して辞任した。

 復興相は組閣の度に入れ替わることが多く、7年8カ月間で計7人が就任した。復興を政権の最重要課題に掲げているにもかかわらず、約1年ごとに次々と復興相が交代し、伊藤さんは「復興が遠のいていく思いがした」という。

 一方、「民主党から政権交代し、評価できる部分もある」とする。安倍政権は旧民主党政権時代から復興予算枠を拡大し、被災自治体には復興交付金の柔軟な運用も認めた。ただ、「その予算が在宅被災者など支援が必要な弱い人のところに届いていないのが残念。日本には災害の専門省庁もなく、現場の声が届いていない」と悔しがる。

 安倍首相は政府主催の追悼式や記者会見で、「被災者一人一人が置かれた状況に寄り添う」と繰り返してきた。制度の隙間(すきま)にこぼれ落ち、仮設住宅に入居することさえできなかった被災者を見続けてきた伊藤さんは「政治は弱い人のためにある。次の首相には、本当の意味で今も苦しんでいる最後の一人のことまで想像力を持って動いてほしい」と訴える。

 「威勢のいいキャッチフレーズと建前だけで本音の議論と国民への丁寧な説明をしてこなかった」。政府の復興政策を検証してきた斉藤誠・名古屋大大学院教授(マクロ経済学)は手厳しく指摘する。

 政府は原発事故による避難指示区域を全て解除するという方針で帰還政策を進めてきた。だが、自治体によっては帰還を望む住民が意向調査で1割ほどにとどまるという現実が横たわる。除染で出た汚染土は原発…

この記事は有料記事です。

残り1729文字(全文3392文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 岩手「感染者ゼロ」の教訓(上)対策阻むプレッシャー 感染者に共感を

  2. ORICON NEWS つんく♂×ソニン、17年ぶり再タッグ 「カレーライスの女」続編

  3. ファクトチェック 菅首相発言「Go Toトラベルでの感染者7人」はミスリード

  4. ファクトチェック 愛知県知事リコール運動 「署名受任者の住所氏名が公報で公開される」はミスリード

  5. 山口組分裂5年 特定抗争指定の効果じわり 一部で脱退の動きも

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです