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◆『インドネシア大虐殺』 倉沢愛子著(中公新書・902円)
◆『楽園の島と忘れられたジェノサイド』 倉沢愛子著(千倉書房・3520円)
冷戦の「沈黙の扉」を開く
私の父は商社マンだった。幼い頃の父は、数か月に一度お土産を抱えて帰ってくる人だった。私へのお土産は、いつも民族衣装を着たお人形で、やがてガラス戸棚いっぱいのコレクションとなった。その中には東南アジアの人形がたくさんあった。極彩色のタイの踊り子、アオザイを着たベトナム娘、不思議な風貌のインドネシアの操り人形。あの頃、一体父はどんな風景を見たのだろうか。この二冊の本の中身も、同世代人が生きている内容だが、おそらく初めて知る人がほとんどではないか。
一九六五年秋から六六年にかけて、インドネシアで大虐殺が起こった。犠牲者の数は、五〇万人とも二〇〇万人以上とも言われる。ポルポト政権下のカンボジアでの大虐殺に匹敵する数だが、カンボジアの事件は八〇年代中期には知られるようになったのに対し、インドネシアの方はつい最近までほぼ知られることがなかった。
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