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「コハダの菅さん、マグロの岸田さん 石破さんは…」 森元首相とすしをつまんだ

すし屋のカウンターで、安倍晋三首相の辞任表明について語る森喜朗元首相=東京都港区で2020年9月10日、梅村直承撮影

 おそらく安倍晋三首相の突然の辞任表明を最大の驚きと惻隠(そくいん)の情をもって受け止めたのは東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相(83)ではないか。なにせ政治の師であり、自らも首相在任中、ひそかにがんを抱えていた身だからでもある。その思いを2時間半たっぷり聞いた。

 「昼メシを抜いたよ。久しぶりにすしが食いたくてね」。インタビューを申し込んだら、森さん、行きつけのすし屋でどうだ、と。安倍首相辞任の舞台裏が聞けるなら、と10日夜、私は東京・六本木にある隠れ家すし屋へ駆けつけた。「そういえば、ここは十数年前にも来たな。あのときは福田康夫首相の後継候補をすしネタにたとえて話したんだったかね」。安倍首相が8月28日に電撃辞任の記者会見をして2週間、怒濤(どとう)の日々が過ぎ、ようやくひと息つきたくなってもいたのか。好物のコハダをつまみながら、薄めのハイボールを傾ける。すし屋のご主人が「ひいきにしていただいた渡哲也さんもコハダがお好きでした」と懐かしむと「私も旅立ちが近いのかな」と森さん。

 「あれは辞任会見前夜の9時45分だった。明日、安倍さんが会見するというので、家から携帯で電話しました。社会部の記者が多いはずだから、しっかりお願いしますよ、解散とか人事にもちょっと触れて、やる気のあるところを見せるようにしてください、と。安倍さんはそうする、と言った。ああ、元気になってよかった、と思ったんです。安心してたら、翌朝からなにやらおかしな空気だ。テレビで安倍辞任のニュース速報が流れ、午後2時半ごろ、安倍さんから辞める決断をしたと電話が入った。残念ですね、体を大事にして、あとのことは相談しましょう、と応じました。いい治療方法があるとはいえ、これから1年、とりわけ五輪のことを考えれば、ここで辞めるべきではないか、とたったひとり悩みに悩み抜かれたんでしょう」

 にわかに永田町は風雲急を告げるが、森さんがしばしぼうぜんとしたのは東京五輪の顔を失うことだった。招致の立役者であり、コロナ禍で開催の1年延期を国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長に申し入れたのも安倍首相である。「私は2年延期でなくて大丈夫ですかと申し上げたんですが、森さんだってがんの特効薬で元気になられたんだから、と押し切られた。ま、それもそうだなと顔を見合わせ、人類が疫病に打ち勝ついい薬が必ずできる、神は見捨てないよ、と五輪成功へ力を合わせて進んでいたところでしたから。安倍さんが1年延期にこだわったのは、2年延期にすれば、総裁の任期(満了)にぶつかり4選を狙っているのではと勘ぐられるのを嫌ったからじゃないかとも思います」

 リオデジャネイロ五輪の閉会式に安倍マリオがサプライズ登場したが、安倍首相はこのまま東京五輪の表舞台から消える? 「そんなことはないね。IOCのバッハ会長、コーツ調整委員長と安倍さんは個人的なコンタクトがかなりありますから。ついさっきもバッハ会長から安倍さんと話をしたい旨の連絡があった。お礼も言いたいし、と。そもそもがん闘病中の私は組織委員会が軌道に乗るまで会長を務め、そのあとは首相を終えた安倍さんに託すつもりでいました。ところが…

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