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新作の花火劇でニッポンにエール 富山・利賀村で今年も「SCOTサマー・シーズン」

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「世界の果てからこんにちはⅡ」の一場面=SCOT提供
「世界の果てからこんにちはⅡ」の一場面=SCOT提供

 コロナ禍で舞台芸術が大きなダメージを受けるなか、8月28~30日と9月4~6日の計6日間、富山県南砺市利賀(とが)村の利賀芸術公園で恒例の「SCOTサマー・シーズン」が開催された。

 「サラエボの劇場じゃないけど、ここは絶対にやめない」。44年前に東京から利賀に拠点を移した劇団SCOT主宰の演出家、鈴木忠志は、最終日のトークで開催に至った思いを口にした。引き合いに出したのはユーゴスラビア紛争さなかの1993年、スーザン・ソンタグがサラエボの劇場に呼ばれ、サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を演出したというエピソードだ。

 戦争とコロナを同列には論じることはできないだろうが、生命のみならず精神文化も脅かされる困難な状況下にあるからこそ、人々の精神活動は止めてはならない。強い思いから実現した公演は、社会はどうあるべきか、人間はどう生きるべきか、演劇を通して多角的に問いを投げかけた。

ギリシャ風の野外劇場で新花火劇「世界の果てからこんにちはⅡ」

 世界の演劇人から「演劇の聖地」と呼ばれる利賀芸術公園は、東京から新幹線とバスを乗り継いで約5時間。山あいの過疎地に六つの劇場を擁する。昨年は国際演劇祭「シアター・オリンピックス」の中心会場として、国境を超えた多数のプロダクションが集まり、国内外から2万人が訪れた。

 だが、今年9月5、6日に訪れた利賀の様相は、大きく違っていた。コロナ禍で人の移動は国内でさえ制限された。海外からの招へいはなく、客席数もキャパの半分に減らすなど規模を縮小した形での開催となった。とはいえ、「利賀」という環境で見る芝居が、やはり特別なものであることには変わりない。

 5日夜にギリシャ風の野外劇場で見た鈴木構成・演出の新花火劇「世界の果てからこんにちはⅡ」が圧巻だった。今回が初演だ。

 夕方の激しいにわか雨は本番の1時間ほど前に上がり、観客のテンションもいや応なく上がる。ユニークな装置が目を引く。鈴木がかつて「どん底」で使ったというキャデラックやベンツの廃車。繁栄の虚飾がはがれ落ち、廃虚となった世界を象徴する。

 酒を酌み交わしながら「日本人」の来し方行く末を語り合う男女の会話に始まる芝居は、コロナ下の状況と、敗戦を経験した昭和の日本が二重写しに。徳富蘇峰や唐木順三らの言説と、昭和の演歌・流行歌をより合わせ、日本人の心性を哲学的に解き明かしていく。

 <生きりゃ女の 哀(かな)しさが/生きりゃ男の 苦しさが>と歌う美空ひばりの「今日の我に明日は勝つ」など、…

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