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389人の遺体解剖、身元特定 入所者に一律「解剖願」 ハンセン病療養所・恵楓園

菊池恵楓園がまとめた調査報告書。身元が特定できた解剖は389件と書かれている=熊本市中央区で2020年9月12日午後3時27分、城島勇人撮影

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 国立ハンセン病療養所「菊池恵楓(けいふう)園」(熊本県合志(こうし)市)で1911~65年に亡くなった入所者のうち、少なくとも389人の遺体が熊本医科大(現熊本大医学部)などで解剖されていたことが、園がまとめた調査報告書で判明した。36~58年には入所者に一律に「解剖願」を提出させていたことも確認された。解剖に関する名簿など詳細な記録は残っておらず、報告書は「人権を軽視していたとのそしりは免れない」としている。

身元特定できない分を加えると479体に

 熊本医科大が昭和初期に入所者43人の遺体を解剖し、20体の骨格標本を作っていたことが2013年に判明したことを受け、入所者自治会などが園に全容解明を要請していた。園は13年に設置した調査委員会で、所蔵する資料や事務文書を調べていた。

入所者に提出を求めていた解剖願(調査報告書より)=熊本市中央区で2020年9月12日午前9時48分、城島勇人撮影

 20年9月にまとまった報告書によると、園の資料と熊本大の解剖資料を突き合わせるなどして、11~65年に死亡した入所者約2400人のうち解剖された389人の身元を特定した。身元は特定できないが資料に記録が残る分を加えると479体となり、うち5体は乳児や死産児だった。

「医学研究に役立てるため」一律に解剖願

 報告書では、園の前身である九州療養所の所長らが解剖に関与し骨格標本作製も知りうる立場にあったことや、36~58年に入所者から「医学研究に役立てるため」として一律に解剖願を提出させていたことも指摘。解剖の法的妥当性については「入所者への配慮・説明がどれほどあったのか、倫理性の問題について深く思いを致さねばならない」としている。

 また、園に解剖された人の名簿がなく、解剖の記録もメモ書き程度のものが少ししか残っていなかったとして「不本意な献体を余儀なくされた御霊(みたま)に申し訳ない」とした。その上で「療養所で行われたことが正しく検証できるよう正確な記録を残していく倫理と責任を負っていることを忘れてはならない」と結んでいる。

入所者「人権無視した療養所の闇が明らかに」

 報告書を受け取った入所者自治会副会長の太田明さん(76)は「患者の人権を無視した療養所の闇が明らかになった。他の療養所でも同様の検証作業を進めてほしい」と話している。【城島勇人】

識者「解剖するだけの医学的根拠あったのか…」

 国のハンセン病問題検証会議で副座長を務めた内田博文・九州大名誉教授の話 解剖の記録がほとんど残っていないことから、解剖するだけの医学的根拠があったのか極めて強く疑われる。国際的な解剖の倫理原則では真摯(しんし)な説明に基づく本人や遺族の同意が必要で、一律に同意を得ていたことも手続き上問題がある。検証会議は2005年に報告書で問題を指摘しており、解剖や標本の検証はもっと自主的に早くなされるべきだった。

ハンセン病

 ノルウェーのハンセン医師が発見した「らい菌」による慢性感染症。手足の知覚がまひしたり変形したりすることがあるが、感染力は弱く、戦後は化学療法で完治するようになった。1907年公布の「癩(らい)予防ニ関スル件」で患者の隔離政策が始まり、31年制定の「癩予防法」(旧法)で本格化。患者をしらみつぶしに探す「無らい県運動」も全国で展開された。53年制定の「らい予防法」(新法)でも隔離政策は継続され、96年の法律廃止まで維持された。

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