メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ALL FOR 2020

東京へ ともに歩む

毎日新聞

パラ陸上の日本選手権男子100メートル(義足T64)で2位になった井谷俊介=熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で2020年9月6日、藤井達也撮影

Passion

再開レースでまさかの2位 パラ陸上のホープ、井谷俊介を阻む「壁」

 新型コロナウイルスの感染拡大以降、パラスポーツの大会として久しぶりに開かれたパラ陸上の日本選手権(9月5、6日、埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場)。2018年アジアパラ大会(ジャカルタ)の男子100メートル(切断など)で金メダルを獲得した井谷俊介(25)=SMBC日興証券=は、男子100メートル(義足T64)で記録が振るわず、2位に甘んじた。【真下信幸】

 6日の決勝。スタートは他の選手と五分だった。それでも50メートル付近で先頭に立ち、持ち味である後半の加速を生かして突き放すかに思われた。しかし、この日はここからが伸びない。「力感が足りないのか、(体が)流れた」。最後は伏兵の大学生に差され、記録も自己ベストの11秒47からほど遠い12秒01。「惨敗ですね。進歩していない。メンタル面で甘さが出た」。3年足らずの競技人生で初めてぶつかった壁を前に、短距離界期待のホープはもがいている。

 大学時代の交通事故により右膝下を切断し、17年11月から本格的に陸上を始めた。そこから1年弱でアジア王者に上り詰め、昨年の世界選手権(アラブ首長国連邦)では初出場ながら決勝に進出。一気にトップスプリンターへと駆け上がった勢いそのままに、今季はさらに記録を伸ばして東京パラリンピックに挑むはずだった。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、代表内定に向けて目標としていた国内大会が中止になり、ついにパラリンピックも延期に。「コロナで練習も思うようにできなくなり、モチベーションは落ちた」。自粛期間中は地元・三重県で砂浜や室内での基礎練習を重ね、スタートの改良にも取り組んだ。それでも、「低いモチベーションが平常になってしまった。ただ(練習を)やっているだけで、頑張ったつもりになっていた」。気持ちが伴わないまま臨んだ練習が、すぐに結果に結びつくほど甘くはなかった。

アジアパラ大会で金メダルを獲得し、表彰式で笑顔を見せる井谷俊介=インドネシア・ジャカルタで2018年10月10日、久保玲撮影

 「練習方法も、コロナの中で取り組んできたことも、方向性を見極めたい」。コロナによって直面した壁を、いかに乗り越えるのか。期待のスプリンターは、その真価が問われている。

いたに・しゅんすけ

 1995年4月生まれ。三重県大紀町出身。三重・津田学園高で野球、愛知・東海学園大進学後はカートレースを経験した。16年2月にオートバイを運転中に事故に遭い、右膝下を切断。17年11月から本格的に陸上を始めた。100メートルの自己ベストの11秒47は、義足T64クラスの日本、アジア記録。

真下信幸

毎日新聞東京本社運動部。1990年、神奈川県生まれ。2013年入社。鳥取支局、福山支局(広島県)を経て、18年4月から現職。パラスポーツや社会人、高校などのアマチュア野球を担当。19年はラグビーW杯も取材した。高校時代はラグビー部に所属。全国屈指の強豪・桐蔭学園からチームで奪った1トライを今でも自慢している(試合は7ー52で敗戦)。