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社説

自民新総裁に菅氏 継承ありきの異様な圧勝

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 菅義偉官房長官が自民党の新たな総裁に選出された。国会で16日に行われる首相指名選挙を経て、菅新内閣が発足する見通しだ。

 総裁選で、菅氏は全体の7割を超える377票を獲得し、圧勝した。岸田文雄政調会長は89票、石破茂元幹事長は68票だった。

 菅氏は事前の予想通り、国会議員票を伸ばし、都道府県連代表が投票した地方票でも6割強を獲得した。

 ただ、地方票では石破氏が約3割の42票を得た。石破氏は安倍晋三首相の政権運営に批判的な立場をとってきた。石破氏が一定の支持を集めたことは、現状に対する地方の不満の表れとみられる。

 今回の総裁選は、7年8カ月にわたった安倍政権の路線を継承するのか、修正・転換するのかが問われた。

政策よりも勝ち馬優先

 だが、勝敗は告示前から見えていた。安倍首相の辞任表明からまもなく、二階俊博幹事長が率いる二階派を皮切りに党内7派閥のうち5派閥が雪崩を打って菅氏支持を表明したからだ。

 多くの派閥は、新型コロナウイルスの感染状況を理由に、「安倍政権の継承」を掲げた菅氏を支持した。

 だが、「安倍1強」の下で主流派だった各派閥が、その権力構造を温存するため、都合の良い候補を探ったというのが実態だ。

 政策の議論は二の次で、とにかく「勝ち馬」に乗ろうとしたのだろう。派閥の利害を優先した身勝手なふるまいではないか。

 安倍政権は、敵と味方を峻別(しゅんべつ)し、首相官邸の方針に異を唱える議員や非主流派を徹底的に冷遇してきた。常に主流派にいなければならないという議員心理が、菅氏の地滑り的な勝利につながったようだ。

 菅氏は総裁に選出された後、「安倍首相の取り組みを継承し、進める使命がある」と語った。しかし、政策の継承ばかりが前面に出て、何を前進させ、どんな国を目指すのかという大きなビジョンは見えない。

 アベノミクスの恩恵は、中間層や中小企業、地方には十分に波及していない。岸田、石破両氏は総裁選でこの問題を提起したが、菅氏はアベノミクスの成果を強調するだけで、格差の是正には言及しなかった。

 財政健全化や社会保障制度の持続可能性に関しても、認識を明確にしなかった。

 菅氏は総裁選で「自助、共助、公助」を掲げたが、その順番によって社会のあり方は大きく異なる。三つのうち何を優先するのかや、具体的にどのような政策をとるかは明確でなかった。

 外交・安全保障分野では、「日米同盟が基軸だ」と述べ、安倍首相の方針を踏襲すると繰り返した。だが、米中対立の激化で国際情勢の不透明感が増している。自分の言葉で外交・安保戦略を語らないのでは不安だ。

長期展望見えない不安

 学校法人「森友学園」への国有地売却や「加計学園」の獣医学部新設、首相主催の「桜を見る会」などの疑惑に、菅氏は解決済みとの姿勢を示し続けた。疑惑に向き合う姿勢を欠いたままでは国民の信頼は取り戻せない。

 党執行部は今回、若手国会議員ら145人が署名をして求めた党員投票を「時間がかかる」として省略し、両院議員総会で新総裁を選出した。

 国会議員票の比重を高め、派閥の合従連衡がよりものを言う状況を作った。

 投票結果の発表にあたっては、国会議員票と地方票を合算した数字だけを明らかにした。党として、地方票や都道府県連の予備選の結果を積極的に公表しようとしなかった。党員が示した意思を明確にするために、具体的な票数を公表すべきだった。

 内輪の論理がまかり通り、有権者により近い党員の声に耳を傾けるという政党の基本姿勢がないがしろにされているのではないか。

 長期政権の下で、自民党が国民の要望や不満をくみ上げて政権中枢に伝える機能が低下している。政府のコロナ対応が国民感覚と大きくずれ、支持を得られなかった原因はこうしたところにもあるだろう。

 国民の声に耳を澄ませ、批判を真摯(しんし)に受け止め、開かれた議論をする。そんな政党に自民党を近づけることができるのか。菅氏はその重い責任を背負っている。

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