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コウノトリ200羽時代 人工飼育による放鳥15年 餌確保や事故死…課題多く

京都府京丹後市久美浜町市場で巣立ち、野外コウノトリ200羽目になった幼鳥=2020年6月25日、野村重嘉さん撮影(同市教委提供)

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 兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園(兵庫県豊岡市祥雲寺)は、2020年5~8月に全国で56羽が巣立ったと発表した。6月25日に京都府京丹後市で野外コウノトリが200羽の大台に乗った後も全国で30羽が巣立った。このペースで増えれば、2年後に300羽を超えるが、餌確保の困難さや事故で死ぬなどの問題も山積している。“コウノトリ200羽時代”の課題をまとめた。【村瀬達男】

22年には300羽超えか

 国内の野生コウノトリは1971年に絶滅したが、2005年9月に豊岡市で人工飼育による放鳥を始め、12年後の17年6月、野外コウノトリは100羽に到達。それから3年で2倍以上の225羽(9月11日現在)に増え、300羽まで残り75羽に。22年には300羽を超える計算だ。

 今年は7府県で繁殖し、ひな56羽の内訳は兵庫31、京都9、福井4、島根4、徳島3、鳥取3、栃木2羽。特に栃木県小山市で、千葉県で放鳥した雄と徳島県から飛来した雌が東日本で初めて繁殖に成功し、繁殖地が一気に東へ300キロ広がった。県内でも豊岡市(ひな27羽)と養父市(同2羽)に加え、今年初めて朝来市で2羽の巣立ちが確認された。

 個体の数が増えれば、餌の確保が難しくなる。200羽達成の記者会見で、郷公園の江崎保男園長は「全国各地で生息・繁殖できるだけの餌を保証する環境収容力の向上が必要だ」と指摘した。

 ほ場整備で水田と水路に高低差が生まれて、魚が産卵のために水田に出入りできなくなり、コウノトリの餌が減っている。江崎園長は「湿地に魚を入れる努力がポイントだ。今は水路と水田が分断されて(童謡の)『春の小川』がなくなった。但馬盆地にモデル地区を作り、魚が上がれるようにしたい」などと水田魚道の必要性を訴えた。

遺伝的劣化回避へ、交配ペア試行錯誤

 「近親婚は昨年は4ペア、今年は1ペア。遺伝的劣化を少しでも回避したい」。郷公園の大迫義人・エコ研究部長が8月、豊岡市内で開かれた「コウノトリ野生復帰推進連絡協議会」で訴えた。

 コウノトリの近親婚は07年から毎年発生し、16年から増加。郷公園が近親婚ペアの卵を健全婚ペアの卵とすり替えたり、偽卵と交換したりしているが、大迫部長は根本的には「(県教委と郷公園が定めた)コウノトリ野生復帰グランドデザインの目標『安定したメタ個体群構造の確立』が必要だ」と説く。

 メタ個体群とは、ロシアや中国の大きな個体群(繁殖地)の周りに日本の個体群があり、時々、個体が移動して遺伝子を交換する構造。国内では但馬同士ではなく、遠い県とのペアが望まれている。

 ただ、大迫部長は14~19年に日本から韓国に渡った個体が9羽いることを紹介。大半は日本に戻ったものの、「韓国の個体とペアになるのも時間の問題」と期待する。また、昨年、鳥取市で巣立った幼鳥が1000キロ以上離れた中国浙江省で確認されたとし、「極東全域で野生復帰が進んでいる」と分析した。

 郷公園によると、放鳥開始の05年から18年末までに69羽を救護し、36羽の死体を収容。このうち鳥獣害対策ネットや送電線などの人工物による事故に遭ったのが47羽いた。同公園の佐川史朗・統括研究部長は同協議会で「コウノトリが送電線に触れ感電したり、農業用ネットに絡まったりする事故が多い。毎年、特定の人工巣塔の周辺で事故が起きている」と指摘。「救護する郷公園の収容力も限界に近付きつつあり、早急な対応が必要だ」と警鐘を鳴らした。

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