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#最後の1年

新型コロナに揺れる学生スポーツ界。最高学年の選手は無念や戸惑いを抱きながら「最後の1年」を過ごしています。

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「その壁を越えて、進め」背中押す声 天理大ラグビー部再始動 集団感染終息

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集団感染で活動休止中には多くの激励の手紙が届いた。イラストもメッセージも温かい=奈良県天理市の天理大ラグビー部グラウンドで2020年9月14日午後5時33分、長宗拓弥撮影
集団感染で活動休止中には多くの激励の手紙が届いた。イラストもメッセージも温かい=奈良県天理市の天理大ラグビー部グラウンドで2020年9月14日午後5時33分、長宗拓弥撮影

 グラウンド入り口に以前にはなかった応援幕が掲げられていた。

 「Tear Down Walls その壁を越えて、進め。」

 62人が新型コロナウイルスに感染した天理大(奈良県天理市)ラグビー部。8月12日に最初の感染が確認されてから活動を休止していたが、9月9日に集団感染の終息を発表し、翌日から練習を再開した。

 168人の部員を率いる小松節夫監督(57)が語る。「バタバタして、選手と連絡を取る余裕もなかった。選手たちからは外へ出た喜びというか、はつらつとしたものを感じる」。混乱の1カ月が過ぎ、グラウンドには秋の訪れを告げる、ツクツクボウシの鳴き声が響いていた。

 集団感染発生後、大学や天理市に対し、批判や謝罪を求める電話やメールが相次いだ。「世間に迷惑をかけたんだから謝罪すべきだ」「感染を防げなかった大学に責任がある」。市への厳しい意見は50件以上にも達した。ラグビー部以外の学生にも影響は及んだ。アルバイト先から出勤停止を求められたほか、教育実習先の学校から受け入れを拒否される事態にも発展した。

 感染者は日に日に増加し、逆風の中で活動再開は見通せなかった。全部員が暮らしていた寮は閉鎖され、陽性者は医療機関や宿泊施設に、陰性者は学内の施設に個別に収容されるなど散り散りになった。小松監督は「ラグビーのことを考える…

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