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社説

菅義偉・新内閣が発足 まず強引な手法の転換を

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 前政権を継承し、前に進めるというだけで果たして乗り切れるだろうか。大きな不安を抱えながらのスタートだ。

 菅義偉内閣がきのう発足した。

 約8年ぶりの首相交代だ。ただし、安倍晋三前首相の突然の辞任表明を受け、急きょ行われた自民党総裁選で決まった後任だ。緊急避難的な内閣と言っていい。

 菅氏もそれを意識したのだろう。「暫定内閣」と見られるのを避けるため半数以上の閣僚を入れ替えた。河野太郎氏を防衛相から行政改革担当相に横滑りさせたのは独自色のアピールと思われる。

 だが総じて、自民党役員人事を含めて各派閥のバランスを重視した人事だ。女性閣僚は2人に減り古い体質から脱皮できていない。

政権の骨格は変わらず

 麻生太郎副総理兼財務相が再任されたのにも驚く。本来は、森友学園問題で財務省が手を染めた公文書改ざんが発覚した時点で引責辞任すべきだったのだ。

 党側の二階俊博幹事長の続投も含め、政権の骨格は変わらない。

 言うまでもなく当面は新型コロナウイルス対策が課題となる。

 忘れてならないのは、これまで後手に回ってきた政府の対策については菅氏も官房長官として重い責任を負ってきたことだ。何が欠けていたのか、きちんと検証するところから始める必要がある。

 コロナ対策に限らない。アベノミクスをはじめとする経済政策やロシアとの北方領土交渉など外交も、安倍前首相の体調悪化前から行き詰まっていた。それを謙虚に認めないと前に進めない。

 何より求められるのは、政治手法を改めることである。

 異論に耳を傾けず、与党の数の力で強引に突き進む。そんな政治を菅氏は安倍前首相と二人三脚で推し進めてきた。

 力ずくの手法の一つが、内閣人事局を使って中央官庁の幹部人事に強く関与してきたことだ。総裁選中も菅氏は、政権の決めた政策の方向性に反対する幹部は「異動してもらう」と明言した。

 しかし官僚が人事を恐れた結果、官邸の意向を忖度(そんたく)し、行政手続きの公正さや透明性が損なわれる政治を招いたのではなかったか。ゆがみを直ちにただすべきだ。

 菅氏は、官僚と違って「私たちは選挙で選ばれている」とも語った。選挙で勝ちさえすれば全ての政策が国民に信任されたとばかりに、一切の批判や反対意見を排除する姿勢が垣間見える。

 コロナ問題や米中対立など世界は今、簡単には解答が見つからない状況にある。いつにも増して多様な意見や提案を吸い上げる必要があるはずだ。国民の声に耳を澄ます一方、官僚組織の総合力をいかに生かすかが課題となる。

 菅氏は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題も担当してきた。そこで見せてきたのは、地元の根強い反対がありながら、強硬に移設を推進しようとする姿だ。

 指導者は強大な権力を抑制的に行使すべきであり、国民の理解と納得を得るのが責務だ。ところが前首相と菅氏は、権力は極力、使うものだと考えてきたと思われる。普天間問題が解決しない現状が示すように、その姿勢を変える時だ。やはり、継承するだけでは済まされない。

解散前には論戦が必要

 新内閣の発足により、与野党ともに関心は衆院解散・総選挙の時期に移っているようだ。もちろん首相が交代した以上、国民の信を問うのが筋である。

 自民党内には早期解散を求める声が強い。「新内閣発足直後は支持率が高そうだから、早めに選挙をした方が得策だ」と考えているのだろう。だがそれは身勝手で、菅内閣はむしろ仕事をしない方がいいと言っているのに等しい。

 全国一斉に選挙ができる状況かどうか、新型コロナの感染状況を慎重に見極めることが不可欠だ。そして、十分な国会論戦を行ったうえで衆院選を行うべきである。

 秋に再び臨時国会を開くやいなや、議論もせずに解散するといったことはあってはならない。

 安倍前政権下では、国会はまるで内閣の下請けであるかのように軽んじられた。政府を監視する国会の機能は薄れ、政権に都合がよい時期に、総選挙をする大義も乏しく衆院を解散するのが当然のようになってしまった。

 野党が再整理された時期でもある。国会を立て直すきっかけとしたい。

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