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#セカンドキャリア

年商100億円の社長になったオリンピック選手 背中押した2人の父

加藤海運本社前に立つ社長で元バレーボール日本代表の南克幸さん=神戸市中央区で2020年7月22日、北村隆夫撮影

 創業143年の老舗物流会社。社長の南克幸さん(49)は身長2メートル、紺のストライプスーツが映える。男子バレーボール日本代表として1992年バルセロナ五輪に出場した。金メダリストの父、病床の義父との誓い……。オリンピアンはなぜ、第二の人生に年商100億円の社長を選んだのか。【新井隆一】

 港町の神戸。沖合に浮かぶ人工島ポートアイランドの一角に、1877(明治10)年創業の総合物流会社「加藤海運」の本社はある。飼料、肥料などの海上輸送、港湾での荷物の積み下ろし。グループ会社を含めると従業員数は400人を超える。8代目社長の南さんは、歴代社長の肖像写真の前で腕組みした。

 「ルーティンワークになりやすい輸送も、自分や家族の人生を支えていると思えば、一つ一つの作業が誇らしく思える。そんな心を持とう。そう社員に発信しています。社員がやりがいを感じ、誇れる会社にするのが一つの目標です」

 父は有名なバレーボール選手だった。1964年東京で銅、68年メキシコで銀、72年ミュンヘンで金と3大会連続五輪メダリストの南将之さん。表彰台の上で金メダルを輝かせ、歓声を浴びる父に憧れた。中学で本格的にバレーを始め、大学4年で日本代表としてバルセロナ五輪に出場し6位入賞に貢献した。

 「身長は218センチが目標でした。コーラを飲むと骨が溶けると言われ、今も口に含んだことはありません。五輪の最終日は自由行動で観光やビーチに行く先輩と別れ、決勝の試合を見ました。満員の体育館でブラジルの優勝を見て、次こそはこの場所に立とうと誓いました」

 だが、96年アトランタ五輪は予選で敗れて出場を逃した。「五輪で金」の目標は遠のき、体にも異変が起きた。

 「ねんざを繰り返していた足首に二十数個の遊離軟骨が見つかりました。もう一度五輪を目指したかったのですが、少し動くだけで痛い。『まずは完治させろ』。父が手術を勧めてくれました」

 2000年4月6日、病院で6時間の手術を無事に終えた。翌日、父と「もう一度、全日本に入るチャンスができた」と言葉を交わす。その夜、一番の憧れだった父は心筋梗塞(こうそく)で急逝。58歳だった。

 「親しい人と酒を飲むと聞き、『おとうも飲み過ぎるなよ』と昼に病院で話したのが最後でした。喪主で悲しむ余裕もありませんでしたが、落ち着いた時、『もう一度、全日本』という父の言葉がフラッシュバックしました」

 悲しみを乗り越え、五輪出場を目指した。ところが06年春、所属先の旭化成で廃部を告げられた。…

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新井隆一

毎日新聞大阪本社運動部。1977年、東京都生まれ。2001年入社。大阪運動部、松山支局、姫路支局相生通信部を経て、07年秋から大阪、東京運動部で勤務。リオデジャネイロ五輪、陸上世界選手権(モスクワ、北京、ロンドン)、ラグビーワールドカップ(W杯)ニュージーランド大会などを取材。高校野球の監督経験もある。

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