「女・男の気持ち」(2020年9月10~16日、東京・大阪・西部3本社版計16本)から選んだ「今週の気持ち」は、東京本社版9月15日掲載の投稿です。
◆ ◆
<今週の気持ち>
5分間の帰省 静岡県小山町・高村真由美さん(主婦・62歳)
「これからドライブスルー帰省するから、門の外に出てきてくれない?」
金曜日の昼、社会人3年目の次男から電話がかかってきた。ドライブスルー帰省? なんだそりゃ。
千葉に住んでいて東京勤務の次男とは、正月以来会えないでいた。「コロナが心配だから、家には入らないことにするよ」
聞けば、大学時代から仲のよい友達3人と申し合わせて有給休暇をとり、レンタカーで山中湖へ遊びにいくとのこと。富士山中腹にある我が家は、山中湖へ向かう途中の道沿いにある。
ほどなく、門前に車が止まった。外に出ていくと、マスクをかけた元気な若者たちが、車の中から大きく手を振っている。「久しぶり! 元気だった?」。私もマスクをつけて近づいた。
車まで2メートル。口々に近況報告をしてくれた。みんなの目が笑っている。「独身最後だから遊んじゃう!」「彼女ができたよ!」。若者たちが次々にまくしたてる。
たった5分の「ドライブスルー」だったのに、1時間の電話よりも豊かで楽しいものだった。当たり前に会えていたら、決して味わえない貴重な5分だった。
若者たちの元気なパワーをもらえたし、何よりも無事で人生を楽しんでいることに安心した。ドライブスルー帰省を思いついてくれて、ありがとう!!
◆ ◆
<担当記者より>
ドライブスルー帰省――よく考えたものだと感心しました。ご次男は学生時代、富士山に近い実家に友人を連れて帰省したこともあるそうで、母である高村さんも彼らとは面識がありました。「本当は家に寄ってもらい、お昼でも食べていってほしかったのですが。でもこういうご時世ですから、5分だけでも十分でした」
モニターを使い、離れた人と顔を見ながら通話することももちろん可能です。でも「実際に息子たちに会えて、すごく安心感がありました。変な言い方ですが『生は違う』んですよ」。高村さんはユニークな表現で、そう振り返ってくださいました。
距離を保ちつつ実現する、新しい再会の形。いいアイデアがありましたら、ぜひお寄せください。共有しましょう。みなさんからのコメントもお待ちしています。コメントはこちらからどうぞ。