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イスラエル・湾岸の国交 宗派対立あおりかねない

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 イスラエルとペルシャ湾岸のアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン両国が国交を樹立する文書に署名した。両者の関係改善ではあるが、手放しでは喜べない。

 パレスチナ問題が置き去りにされたままであることに加え、バーレーンの複雑な宗派構成を考えると、地域が不安定化するリスクが高まっているからだ。

 1948年に建国されたイスラエルはアラブ諸国と繰り返し戦火を交えてきた。今回の合意によってイスラエルと国交を持つアラブ諸国はエジプト、ヨルダンに2カ国を加え計4カ国となった。欧州連合(EU)などから歓迎の声が上がっている。

 仲介したトランプ米大統領は合意を外交成果とアピールしている。だが、トランプ氏は就任以来、イスラエル寄りの政策を強引に推し進め、パレスチナ問題は進展していない。今回の合意について、「パレスチナ問題を覆い隠すための和平」との指摘も出ている。

 トランプ氏が大統領選挙を前に支持基盤であるユダヤ系やキリスト教右派の票取り込みを狙い、アラブ側に圧力をかけたとの観測も根強い。中東問題を政治利用したなら、許されることではない。

 バーレーンがイスラエルとの関係改善に踏み切ったことで、イスラム教スンニ派とシーア派の宗派対立が激化する懸念もある。中東ではシーア派大国イランの影響力が拡大している。シリアやイエメンの内戦は、イランとスンニ派のサウジアラビアとの代理戦争ともいわれている。湾岸の両国が合意に動いた背景にもイラン封じ込めの側面がある。

 バーレーンは6割を占めるシーア派住民をスンニ派の王族が支配する。湾岸アラブ諸国で唯一、シーア派が多数派だ。シーア派住民は政治、経済的に抑圧され反政府運動を繰り返してきた。2011年にもシーア派住民のデモが激化し、サウジを中心とした湾岸諸国の合同軍が鎮圧している。

 バーレーン、イエメンなどのシーア派組織は早くも今回の合意に反発している。イランの働きかけがあったと考えられている。

 中東を安定させるには米国がパレスチナ和平に本腰を入れるとともに、イランとの関係改善を進めて宗派対立を回避するしかない。

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