連載

新・コンサートを読む

梅津時比古・特別編集委員の「コンサート」にまつわるエッセー。

連載一覧

新・コンサートを読む

コロナ後初のオペラ上演《カルメン》 照射される愛の本質=梅津時比古

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
=林喜代種撮影
=林喜代種撮影

 東日本大震災の津波にすべてが流されてゆくテレビ映像を見て、「もう元に戻れない」と多くの人が感じたことは、その後のさまざまな発言で分かった。私自身は長い間、罪意識に襲われ続けた。しかし、9年たって現地を除けば社会は「元に戻って」しまった。私自身の罪意識も霧散してしまった。

 新型コロナウイルス感染の危機は東日本大震災のように過激にではないが、やはり「もう元に戻れない」感覚を静かに突きつけてくる。違いは、「元に戻りたい」気持ちが切実であった大震災時に対し、今回は「元に戻ってはいけない」と自己に言い聞かせる感覚がまじっていることであろう。改めて大震災に関して、自分が部外者であったことのいいかげんさを突きつけられる気がする。社会全体でも責任がうやむやになった。

 藤原歌劇団がビゼー《カルメン》を上演した(8月15日、東京・新百合ケ丘のテアトロ・ジーリオ・ショウワ)。歌手たちはフェースシールドを着け、オーケストラ団員はマスクを着用している。

この記事は有料記事です。

残り803文字(全文1223文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る