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菅政権下の「政と官」 さらなるゆがみ懸念する

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 安倍晋三前政権が推し進めた首相官邸主導の政治は、政策決定の迅速化を可能にした半面、大きな弊害を残した。「政と官」の関係のゆがみである。

 前政権では「官邸官僚」と呼ばれる首相の秘書官や補佐官が、首相の威光を借りて大手を振った。出身省庁の枠を超え、閣僚や事務次官の頭越しに省庁を動かしたり、政策を決めたりした。

 官邸官僚が「首相の意向」を語り、国家戦略特区での大学の学部設置申請に早急に対応するよう迫った、と文部科学省の元事務次官が告発したこともあった。

 外交では、政策の継続性を重視した外務省の方針が官邸官僚に覆されるケースもあった。北方領土交渉を含む対ロシア外交は、その典型だった。

 菅義偉首相は官邸官僚を一部入れ替えたが、システムは温存した。引き続き重用するのなら、ゆがみが拡大するおそれがある。

 首相は自民党総裁選中、政権が決めた政策の方向性に反対する省庁幹部は「異動してもらう」と明言した。

 霞が関の高級官僚約600人の人事を一元的に管理する内閣人事局も見直さないという。

 官邸の意向に沿う者が厚遇され、異を唱えれば遠ざけられる。人事権をちらつかされれば、官僚には恐怖心が芽生え、萎縮や首相官邸への過剰な忖度(そんたく)が生まれる。

 これが森友・加計学園問題などの疑惑を生み、その解明を阻むように公文書などが改ざんされたり、廃棄されたりする土壌を作ったのではないか。

 前政権は二つの疑惑を受け、公文書管理のガイドラインを改定した。ところが、「桜を見る会」の問題が浮上すると、抜け道を使って招待者名簿を廃棄した。

 新型コロナウイルス対策を話し合う重要な会議も、発言者や発言内容の詳細が分かる議事録を残していない。官房長官として政権の中枢にいたのは菅首相だ。

 政策の立案や決定の過程を正確に記録し、国民に対する説明責任を果たすことは行政に携わる者の責務だ。

 政と官の関係をただし、公文書を軽んじた前政権の姿勢を改める必要がある。首相は新政権の発足をその契機にすべきだ。

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