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同性愛が処罰された時代に描かれたゲイアート「トム・オブ・フィンランド」 大使館が発信するまでの歴史

渋谷パルコの「GALLERY X」で開かれているトム・オブ・フィンランドの個展。貴重な原画が飾られている=東京都渋谷区で2020年9月17日、中嶋真希撮影

 同性愛に偏見の目が向けられていた時代に、官能的に描かれた筋肉質な男性たち――。北欧・フィンランドで、ゲイの男性の開放的な姿を描いた画家「トム・オブ・フィンランド」ことトウコ・ラークソネン(1920~91)。彼の生誕100年を記念する日本で初めての個展が東京・渋谷パルコの「GALLERY X」で開かれている。共催したのは日本国内で学術や文化にまつわる活動をするフィンランドセンターと在日フィンランド大使館、パルコ、TOM OF FINLAND財団など。46~89年に製作され、抑圧と闘ったエロチックな作品30点が並ぶ個展を、大使館がなぜサポートし、発信するようになったのか。ここまでに至る歴史をたどった。【中嶋真希】

 フィンランド南西部の小さな町で生まれたラークソネンは、20歳で陸軍に招集され、終戦後にイラストレーターになった。大手広告代理店「マッキャンエリクソン」のアートディレクターとして活躍する傍ら、自室に隠れて開放的なゲイの男性の姿を描いた。57年に作品が米国のゲイ雑誌の表紙を飾ったことから評判となり、イギリスのロックバンド「QUEEN」のボーカル、フレディ・マーキュリーにも大きな影響を与えた。

 「平等、人権、寛容さ、尊敬すること、そして自由であること。トム・オブ・フィンランドの作品には、フィンランドにとって重要で、さらに世界に伝えたい価値観が詰まっている」。同大使館の報道・文化担当参事官、マルクス・コッコさんはこう説明する。大使館としてサポートしていることについても「彼の作品を通して平等の重要さを世界に発信できるからこそ。光栄に思うし、海外に彼の作品を紹介できることがうれしい」と語る。

 個展は当初、春に開催する予定だった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で延期されていた。「今年は、生誕100年を祝う年。フィンランドセンターやパルコ、キュレーターとともに努力し、なんとか年内の開催にこぎつけることができた」と胸をなで下ろす。

 世界的に著名なトム・オブ・フィンランドが、フィンランド国内で特に注目が高まったのは、ここ10年ほどだという。きっかけは2014年に記念切手が販売されたこと。老舗メーカー「フィンレイソン」も作品が描かれたバッグなどを販売し、人気を博した。同性婚を認める法案も同年に可決された。コッコさんは、「そのムーブメントとトム・オブ・フィンランドへの関心の高まりが連動しているかはわからない。しかし、同じ時期に盛り上がりを見せているのは興味深い」と話す。

 フィンランドでは現在、男女平等や性的少数者への理解が進んでいる。しかし、ロシア統治下の1889年に制定された刑法では、同性愛は処罰の対象とされていた。「ムーミン」の作者として知られるトーベ・ヤンソン(1914~2001)も、同性愛が罰せられた時代から同性パートナーとともに暮らしていたが、周囲には知られ…

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