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健やかな地球を次世代に残せるかどうかの岐路に立っている。今のままでは難しい。
国連が発表した報告書は、自然を守る各国の取り組みが不十分だと指摘した。
今年は、国連が定めた「生物多様性の10年」の最終年に当たる。名古屋市で2010年に開かれた生物多様性条約の締約国会議で、具体的なルールが採択された。開催地にちなんで「愛知目標」と呼ばれる。
報告書によると、目標20項目のうち達成できたものはなかった。自然保護区の指定や外来生物対策などに前進が見られたが、それを上回る速さで破壊が進んだ。
目標採択に貢献した日本も、達成できたのは5項目だった。自治体に義務づけられている地域戦略は、3県で策定できていない。「生物多様性」という言葉を、国民の約半数が知らない。
実感しにくいが、生物多様性を守ることは私たちの命を守ることにほかならない。
これまでの地球は、多様な生物が調和を保ちながら共存し、人類はその恩恵を受けてきた。サンゴ礁は天然の防波堤として働く。さまざまな樹木が生い茂る熱帯雨林は「地球の肺」だ。光合成を通して酸素を生み、大気を整える。
だが、この半世紀に人口は倍増し、農地を確保するために森林が切り開かれた。陸地の75%が改変され、野生動物の個体数は3分の1に減った。100万種以上が絶滅の危機にある。
農薬の過剰な使用は土地を劣化させた。果物やナッツ類などの受粉を助ける動物が減り、影響が懸念される。海洋資源の3分の1は、将来枯渇する恐れがある。
状況は危機的だが、努力次第で希望もある。自然を保護し、損なわれた自然は再生させる。農薬やプラスチックなど有害物質の排出を減らす。節度ある生産と消費をビジネスの世界に根付かせる。自然破壊を加速させる地球温暖化への対策は必須だ。
各国は21年から10年間の新たな共通ルールを議論しており、来年には決まる。「2050年には自然と人類の共生が実現している」。締約国全てで合意した大目標を忘れることなく、一層の努力を続ける必要がある。