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オトナの心に刺さる「ビリー・エリオット」 人生の挫折と希望を圧巻のパフォーマンスで

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ミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」の一場面。中村海琉(左)と河井慈杏=田中亜紀撮影
ミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」の一場面。中村海琉(左)と河井慈杏=田中亜紀撮影

 英国初演から14年。やっぱりミュージカル史に残る傑作だ。ミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」(リー・ホール脚本・作詞、スティーブン・ダルドリー演出)の日本人キャスト版が一部配役を替えて、3年ぶりに上演されている。

 10年前に米ブロードウェーで2回、その後、ロンドン・ウエストエンドで、と繰り返し見てきた。エルトン・ジョンによるバリエーション豊かな名曲、「Swan Lake Pas de Deux(白鳥の湖 パ・ド・ドゥ)」「Electricity(電気のように)」など数々の名シーンが心に刻みつけられている。なのに、何度見ても心が震え、見るたびに新鮮な発見がある。今回、ことさら感慨深いのは、コロナ禍に見舞われた昨今の社会情勢とも無縁ではないのだろう。

 大ヒットした映画「リトル・ダンサー」の舞台化。1980年代半ば、英国北東部の炭鉱町が舞台だ。バレエダンサーを夢見る少年ビリーの成長と、不採算の炭鉱閉鎖を打ち出した「鉄の女」マーガレット・サッチャー首相の政策に、ストライキで対抗する炭鉱労働者たちの怒りと挫折、誇りが二重らせんのように描かれる。

見る者に、年代を問わずそれぞれの人生を考えさせる奥行き

 まず目を奪われるのは、クラシックバレエからタップダンス、アクロバット、ストリートダンスなど、ビリーの心象風景を表すように繰り出される圧巻のダンスシーンだ。今回もオーディションで選ばれた4人のビリー(川口調/利田太一/中村海琉/渡部出日寿)が感情豊かに演じている。友達のマイケル(河井慈杏/菊田歩夢/佐野航太郎/日暮誠志朗)と踊る「Expressing Yourself(自分を表現しよう)」は、固定観念にとらわれることなく生きる大切さをストレートに問いかけるタップが見せどころの軽快なナンバーだ。

 だが、それに負けず劣らず心打つのは、ビリーの父ジャッキー(益岡徹/橋本さとし)、兄トニ(中河内雅貴/中井智彦)、ジョージ(星智也)をはじめ深い地の底で働く炭鉱労働者たちの戦いだ。「Solidarity(団結を永遠に)」は作品を貫くテーマを象徴的に、かつエンターテインメント性…

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