メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

「キング」のプライド超えた東京オリンピックへの道 内村航平の決断の意味するもの

悩み抜いた末に種目別の鉄棒に絞って東京オリンピックを目指すことを決めた体操男子の内村航平=東京体育館で2018年4月29日、宮間俊樹撮影

 体操男子で個人総合の王者は「キング・オブ・ジムナスト」と称される。五輪を2連覇した内村航平(31)=リンガーハット=も「キング」と呼ばれてきた。その内村が種目別の鉄棒に絞り、来夏の東京オリンピックを目指している。9月22日に約1年ぶりの実戦で再スタートを切る、キングの決断の意味するものとは。【円谷美晶】

 21日午後、種目別の鉄棒に専念後初の大会となる全日本シニア選手権を控え、会場となる高崎アリーナ(群馬県高崎市)で記者会見した内村は時折、笑みを浮かべながら口を開いた。「演技は1分で終わる。その1分に、鉄棒に絞ったことを凝縮させて出せれば」。東京五輪への新たな道を歩む試金石となる試合に向け、集中力を高めた。

 跳躍力が求められる床運動や跳馬、腕力が問われるつり輪など、6種目の合計点で争う個人総合はあらゆる筋肉を酷使する。20代後半から体力面の不安を口にしていた内村も、体が悲鳴を上げていた。2016年のリオデジャネイロ五輪で個人総合2連覇を果たしたものの、翌年の世界選手権では左足首を痛めるなどし、王座から陥落。08年11月に始まった五輪や世界選手権を含む個人総合の連勝記録は「40」でストップした。

 昨年からは両肩の状態が悪化。100本を超える注射を打ってきたが、痛みが完全に癒えることはなかった。得意種目であり、比較的肩への負担が軽い「鉄棒」に絞ることが現実的な選択肢だと分かってはいた。一方で「6種目やらない自分は自分じゃない。プライドを捨てることはできなかった」。心は揺れた。

 強さを支えてきた質、量ともに群を抜く日々の練習も、「痛くなるんじゃないか」という恐怖心が消えず十分にできなくなった。佐藤寛朗コーチと相談し、昨年末から体への負荷を確認する「実験」として、鉄棒に絞って練習する期間を設けた。すると、痛みが出ず、体を自在に操る競技の楽しさを思い出した。今年2月、鉄棒一本で勝負する覚悟を決めた。

 内村が6種目へのこだわり以上に、強い思いを口にしてきたのが東京五輪だった。「4年に1度じゃなく、一生に1度。出られるのは奇跡に近い」。巡り合わせに運命を感じ、東京五輪に出られない自分は考えられなかった。

 04年アテネ五輪団体金メダルメンバーの水鳥寿思(ひさし)・日本体操協会男子強化本部長は、そんな内村の心境をこう推し量った。

 「今までは『自分の体操を追求する』という体操観、ポリシーのようなものが一番上だったかもしれない。それを捨ててでも出たいのが東京五輪。彼…

この記事は有料記事です。

残り1229文字(全文2269文字)

円谷美晶

毎日新聞東京本社運動部。1985年、東京都生まれ。2009年入社。北海道報道部、千葉支局を経て、東京社会部では気象庁や東京都庁を取材。18年から東京運動部で五輪取材班となり、体操、トライアスロンなどを担当。高校までの部活動は陸上で中・長距離の選手。いつも皇居周りを走っていた。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 大阪都構想 反対が賛成上回る 9月上旬の前回調査から賛否逆転 世論調査

  2. 「優しく温厚。成人式で会えると…」 大阪・巻き添え死 女子学生の友人が涙

  3. 「嵐フェス2020」収録中の花火で神宮球場の試合中断 ジャニーズおわび

  4. #排除する政治~学術会議問題を考える 学術会議への関心は「新政権のツッコミどころだから」 投稿炎上、西田亮介氏の真意は

  5. 大阪・梅田HEP FIVEで高校生転落し死亡 路上の19歳巻き添え意識不明

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです