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気候危機招いた資本主義の矛盾撃つ 「新しい脱成長」斎藤幸平さんが描く未来

インタビューに答える斎藤幸平さん=大阪市北区で2020年9月9日、大西達也撮影

 記録的な猛暑に集中豪雨、スーパー台風の襲来。気候変動はいよいよ私たちの生活を脅かしている。経済思想家、斎藤幸平さん(33)の新刊『人新世(ひとしんせい)の「資本論」』(集英社新書)は気候危機の時代に、まさにその危機の根本原因である資本主義の矛盾を撃ち、目指すべき社会のビジョンを鮮やかに描く。「経済成長を続けながら地球環境を守るのは無理がある。危機を乗り越える唯一の選択肢は、資本主義そのものに挑む新しい脱成長だ」と斎藤さんは唱える。

 冒頭から耳の痛い話が続く。著者に言わせれば、エコバッグもマイボトルも「環境保全につながる良いことをした」という免罪符でしかない。現実の危機と欺まんから目を背け、有限である地球を壊してまで経済成長を追い求める私たちは<正気を失っている>と。人類がこれまでに使った化石燃料の約半分は、冷戦終結後のわずか30年間で浪費された。大量生産・大量消費を土台にした生活の代償として気候危機に直面する今こそ、「資本主義というシステムを相対化し、その枠を超えた議論が必要です」。

 一体、資本主義の何が素晴らしいのか。「資本主義の矛盾が深まっていくのを体感しながら育った」という著者は率直にそう問う。豊かな生活を約束したはずの経済成長は人々を終わりの無い労働に追い立て、格差をますます広げ、地球環境を食い尽くす。なぜなら「人間も自然も収奪の対象とし、無限の経済成長を目指すのが資本主義の本質」だからだ。「誰もがその被害者ですが、つけを払うのはこれからを担う世代。若い世代には今の社会を変えなくては豊かな未来はないという強い実感がある」。昨今の世界を見渡せば、17歳のグレタ・トゥーンベリさんによる「気候ストライキ」など若者たちの社会運動が盛んだ。「それに刺激を受けてこの本を書きました」

 タイトルの「人新世」は、温室効果ガスや海洋プラスチックごみなど人類の活動が地球に壊滅的な影響を与えている時代を指す。資本主義の限界と地球環境の破壊。この二つの危機に陥っている人新世の時代に目指すべき新しい社会とは何か。

 それは第一に新しい脱成長だと本書はいう。「日本で脱成長が不人気なのは、経済の長期停滞が続いてみんな貧しくなると考えるから」。実はその考えは、経済成長を否定しながら資本主義の温存を願う古い脱成長論であり、「丸い三角を描くような空想主義」と一蹴する。対して新しい脱成長は資本主義との決別を求める。「社会繁栄の必須条件として経済成長を追い求めてきた社会をラディカルに批判し、これまで犠牲になってきた文化的な活動や人々の健康を重視する社会へと移行する」。いわば「量的な成長」から「質…

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清水有香

2006年入社。和歌山支局、編集制作センターを経て13年から大阪本社学芸部。主に美術・ファッションを担当し、育休より復帰後の20年からは文芸・宝塚を中心に取材。ほかに音楽、映画、建築など幅広く関心がある。

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