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常夏通信

その62 戦没者遺骨の戦後史(8) 遺骨とともに見つかる不発弾 「特殊な場所」硫黄島を実感 

硫黄島・滑走路西の遺骨収容現場=2012年7月11日撮影、厚生労働省提供

 第二次世界大戦の激戦地、硫黄島(東京都小笠原村)で戦没者遺骨収容団に参加した私は、想像以上にたくさんの遺骨を掘り出した。2012年7月。東京都心から1250キロ南、日光がもろに降り注ぐ現場だ。立っているだけでもたまらなく暑い。さらに長そでのシャツと長ズボンにヘルメット。息が上がり、スコップをふるう手が止まる。「栗原さん、少し休んで」。厚生労働省の担当者からそううながされた。

 この時、私は45歳。「いや、高齢の遺族が掘っている。俺はこの現場では若手だ。がんばらないと」と、深呼吸を繰り返した。利き足の右足に力を込めて黒土を踏みしめる。はいていた靴のかかとが、いきなり割れた。不安定な足場に適した登山用のトレッキングシューズ。旧満州(現中国東北部)で戦跡の取材をした時にも履いた、頼りになる靴だ。しかし、しばらく押し入れに入れっぱなしにしていたため湿気を吸い、弱くなっていたようだ。硫黄島の地熱も影響したのかもしれない。

 「掘り始めて早々に……」。気持ちが暗くなりかけたが、ひもで靴をしばり、掘り起こしを続けた。

 私たちが掘っていたのは島の中央部にある自衛隊滑走路の西側だ。遺骨は数え切れないほど見つかる。慎重に掘り出そうとする。一見、頑丈そうな骨でもしかし、パラパラと細かくなってしまう。黒い土に混じる。これをすべて本土に持ち帰ることはできない。

 「この小さい粒もすべて、だれかの骨なのに……」と思う。1945年に戦争が終わってから、この時点で67年。硫黄島がアメリカから68年に返還されてから44年が過ぎている。「どうしてこんなに長い間、埋まったままにされてきたのか」という疑問がわき起こる。

 現場では機関銃などの兵器も出土した。米軍の駆逐艦が放ったとおぼしき主砲の不発弾も。遺骨収容団を支援していた、陸上自衛隊の爆発物処理班が応急措置をした。後日、爆破処理をするとのことだった。

 私が掘っていたところから1メートルも離れていない場所で、手投げ弾も見つかった。私は一年中「8月ジャーナリズム」すなわち戦争に関する報道をしている。兵器マニアではないが、第二次世界大戦で使われた兵器については、人並みの知識を持っているつもりだ。手のひらに収まる程度の小さな手投げ弾でも、恐ろしい殺傷力があることは分かっていた。

 しかし硫黄島で土まみれの手投げ弾を見ても、正直なところあまり危険だとは思わなかった。「高温多湿の南国でずっと土の中に埋まっていたものだから、爆発することはないのでは」、と。「それに現場に自衛隊員がいる。危険ならば収容は直ちに中止になるだろう」、とも思っていた。

 後日、同処理班の若い隊員と話す機会があった。

 「本当は(手投げ弾などの不発弾が)見つかったら、すぐに避難してほしいんです。危険ですから」

 確かに、都心で駆逐艦の主砲の不発弾が見つかったら大騒ぎになるだろう。周囲の住民は一時避難を強いられ、自衛隊の爆発物処理班が出動、処理することになるかもしれない。

 しかし、硫黄島では遺骨収容が進められた。ここがさまざまな意味で特殊な場所であることを、改めて感じた。

 現場にはテントが張られ…

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栗原俊雄

1967年生まれ、東京都板橋区出身。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院修士課程修了(日本政治史)。96年入社。2003年から学芸部。担当は論壇、日本近現代史。著書に「戦艦大和 生還者たちの証言から」「シベリア抑留 未完の悲劇」「勲章 知られざる素顔」(いずれも岩波新書)、「特攻 戦争と日本人」(中公新書)、「シベリア抑留 最後の帰還者」(角川新書)、「戦後補償裁判」(NHK新書)、「『昭和天皇実録』と戦争」(山川出版社)など。

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