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この国に、女優・木内みどりがいた

<6>急逝2カ月半前 パキスタンのスラムで何を見たのか

煙が上るゴミ捨て場(奥)と住民がバラックで暮らすスラム(中央)、手前 の白い建物は子どもたちが通うアル・カイールアカデミー第2分校=2019年8月

 女優の木内みどりさんは急逝する2カ月半前、パキスタンの商業都市カラチ郊外のスラムを訪れている。悪臭が漂う中、子どもたちが現金を稼ぐためゴミ捨て場で金属を拾い集める姿を見た。世界の紛争地や貧困の現場などを訪れた木内さんは、何を「発信」しようとしていたのだろうか。【企画編集室/沢田石洋史】

 著名な女優が、なぜスラムを訪れることになったのか。少し長くなるが、ここでの「大地を守る会」の活動を紹介したい。有機野菜の宅配事業を行っている「大地を守る会」は環境、平和、貧困といった社会的課題の解決に向けた取り組みも行っている。

 その一環として、NPO法人「日本ファイバーリサイクル連帯協議会(JFSA)」(千葉市)の活動に賛同し、大地を守る会の会員に古着や毛布などをJFSAに送るよう呼びかけている。それらは世界的な古着市場があるカラチに送って現金化され、パキスタン国内の計9校舎で児童生徒約4500人が通う学校「アル・カイールアカデミー」の運営資金に充てられる。木内さんはJFSAや「大地を守る会」の一行と、巨大なゴミ捨て場の一角にある、スラム街の校舎を視察したのだった。

 このスラムで収入が少ない親は、子どもを労働力とみなしており、学校に通わせようとしない。ゴミの中から金属を拾い集める子どもたちがいるのは、親が少しでもお金を稼いでほしいと思っているからだ。「大地を守る会」の創業者、藤田和芳さん(73)の著書「有機農業で世界を変える」(工作舎)から、ゴミ捨て場の様子を引用する。

 <自然発火と子どもたちがゴミの中から金属を拾い出して現金化するためにゴミを燃やすことで、昼間でもあちこちからモウモウと煙が立ち込めている。地面には生ゴミから滲(し)み出た汚水が流れ、腐臭がツーンと鼻をつく。そういう場所に、数万人の人々が粗末な掘っ立て小屋を建てて住んでいるのである>

 この校舎で子どもたちには給食が無料で提供され、親にとって子どもを通わせる動機となる。貧しくて靴を買えず、裸足で歩く子どもは破傷風になる恐れがあるが、この学校に通う子どもにはサンダルが配られる。教科書や文房具も無料だ。そのような運営資金に、日本からの古着などのカンパも充てられているのだった。

 事前にスラムの様子を藤田さんから聞かされていた木内さんは「体がヒリヒリするような場所ね。お酒が飲めなくても、行ってみたい」とパキスタン行きを決めた。ここで、「お酒」についてあえて触れるのは、木内さんはこの旅に行くかどうか迷うほど、お酒が大好きだったからだ。イスラム教国のパキスタンで飲酒は原則禁止されている。旅行前の私のインタビューに「行きたいけど、お酒が飲めないんですよね」と真剣に悩んでいた。実際に訪れたゴミ捨て場は、想像を絶していたようだ。藤田さんは述懐する。

 「お母さんと3、4人の子どもたちが、ゴミを燃やしているんですけど…

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