/1 森田富美子さん(91) 原爆で失った家族 「体に残そう」と血を手に…
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「その時、この手は洗えないと思いました。自分の体にしっかりと残そうと思って、すり込みました」。東京都内に住む森田富美子さん(91)はそう話し、左右の手のひらをすり合わせた。75年前、長崎で被爆。父と母、弟2人の遺体を大きなトタン板に並べて火葬した。手には黒いすすと一緒に、両親と弟たちの血のりがべったりとついた。
森田さんは当時16歳。市内の女学校に通っていた。8月9日は「報国隊」の一員として、爆心地の南約10キロの香焼(こうやぎ)島にいた。トンネル内にあった工場に突然、猛烈な爆風が吹き込んできた。近くの丘に上がると、長崎市の上空に大きな煙が見えた。
2日後、爆心地の西約200メートルにあった自宅の跡地に戻った。2階建てだった家は焼け落ち、父が門柱に背をもたせかけた状態で絶命していた。炭化して真っ黒だった。屋内には三男を抱えた姿で生焼け状態の母。茶の間だった場所には真っ黒に焦げた塊があり、服の切れ端から次男だとわかった。近くの川でカニ捕り中に被爆したとみられる長男の遺体は見つからなかった。
「戦争はいけない。ひとたび始まると、一番大事な人、大人も子どもも亡くなる。原爆が落とされれば、あっという間に亡くなるんです」 【後藤由耶】
◇ ◇
民間人80万人を含む310万人が犠牲になり、アジア諸国にも甚大な被害を与えた日中戦争と太平洋戦争の終結から75年。戦後生まれが全体の8割を超え、戦争の実相を知る体験者は減り続けています。すさまじい体験を語り継ぎ、新たな悲劇を防ぎたい。体験者の「次代への遺言」を映像で記録します。
取材班は戦争体験の証言者を募集します。貴重な言葉を「次代」にのこすお手伝いができればと考えています。連絡先などをメール(movie@mainichi.co.jp)でお寄せください。…
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