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#やまゆり園事件は終わったか~福祉を問う

植松聖死刑囚の死刑判決が確定した相模原障害者殺傷事件。日本の障害福祉政策の問題点と、解決の道筋を探ります。

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⑩定員130人の大規模知的障害者入所施設閉鎖 千葉県が決めた経緯とは

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広い敷地に建つ「千葉県袖ケ浦福祉センター」の建物=千葉県袖ケ浦市で2020年9月8日午後0時46分、塩田彩撮影
広い敷地に建つ「千葉県袖ケ浦福祉センター」の建物=千葉県袖ケ浦市で2020年9月8日午後0時46分、塩田彩撮影

 大規模な知的障害者入所施設が存続する中、今夏、定員130人の県立入所施設の閉鎖を決めた自治体がある。「千葉県袖ケ浦福祉センター」(千葉県袖ケ浦市)を指定管理する千葉県だ。このシリーズ最終回は、国も「近年聞いたことがない」(厚生労働省)という大規模施設閉鎖に至る背景を探る。閉鎖に至る道筋には、県内関係者が1施設だけでなく、県内全体の支援体制を構築しようと試行錯誤した経緯があった。千葉県の事例をもとに、施設から地域への移行のヒントを考える。【塩田彩、上東麻子/統合デジタル取材センター】

重度の人の支援に行き詰まり…

 「障害者施設を廃止へ」――。千葉県が2022年までに県立の袖ケ浦福祉センターを廃止すると8月31日に発表した。このニュースは全国の障害福祉関係者を驚かせた。

 「出られる人はすでに出た。地域では生活できない人が施設に残っている」。各地の大規模入所施設の現状を取材していた記者は、施設や行政の担当者から、何度もこんな言葉を聞かされた。地域移行の取り組みが停滞する中、千葉県はどのようにして閉鎖の決断に至ったのか。現場を訪ねた。

 東京湾アクアラインの袖ケ浦インターチェンジから車で約20分。田畑や雑木林の中に住宅が点在する郊外に、千葉県袖ケ浦福祉センターがある。約8.7ヘクタールの広大な敷地。正門から約100メートル先の正面に重厚なコンクリート造りの成人向け入所施設「更生園」が見えた。左手には、同じくコンクリート造りの障害児向け入所施設「養育園」が建っている。アスファルト舗装の広い車道と芝生が、晩夏の強い日差しにじりじりと照らされていた。見渡す限り人影はなく、時間が止まったように静かだった。

 センターの開設は1966年。千葉県の人口が急増した80年代には定員が計430人に上った。現在の定員は計130人だが、新規受け入れは停止しており、入所者は8月末時点で計67人。構内は使われていない部屋も多くがらんとしている。

 きっかけは悲惨な事件だ…

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