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柴崎友香さん『百年と一日』

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新刊「百年と一日」(筑摩書房)を執筆した小説家の柴崎友香さん=船寄剛さん撮影
新刊「百年と一日」(筑摩書房)を執筆した小説家の柴崎友香さん=船寄剛さん撮影

 ◆柴崎友香(しばさき・ともか)さん

 (筑摩書房・1540円)

偶然交差した人生の断片

 33の掌編小説を収める。銭湯で、角のたばこ屋で、待ち合わせの噴水広場で、偶然交差したいくつもの人生の断片が淡々と描写される。

 自身の記憶にある風景を手がかりに書いたという一編一編には、あらすじのような題名がつく。<小さな駅の近くの小さな家の前で、学校をさぼった中学生が三人、駅のほうを眺めていて、十年が経(た)った>といった具合に。「言葉を尽くして一瞬を語ったり、長い時間を一言で表したり、小説の時間の書き方は面白い」。同じ内容でも題名と本編とで異なる時間が流れる。

 駅前で知らない女に怒られた男の話。駐車場にぽつんと建つラーメン屋の話。どれも劇的な展開やオチはない。「現実を生きていると、よく分からないままのことの方がたくさんある」。昔話やカフカの短編のように、「“普通”と違う論理で進むのに納得してしまう不思議な話が好き。それを現代の小説でもできないかと考えました」。

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