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加藤陽子・評 『民衆暴力 一揆・暴動・虐殺の日本近代』=藤野裕子・著

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『民衆暴力 一揆・暴動・虐殺の日本近代』
『民衆暴力 一揆・暴動・虐殺の日本近代』

 (中公新書・902円)

怒りは、さらに弱い他者へ向かう

 大学生のひと月の本代が2千円を切って久しい。ましてコロナ禍で図書館利用も制限されるとなれば。一つ心強いのは、自学独習に最適の新書のレーベルが各社から多数用意されていることだ。

 『昭和史講義』などの「講義」本を早くから揃(そろ)えたのが、ちくま新書。『シリーズ日本近現代史(2)民権と憲法』のように「シリーズ」で一時代を扱うのが岩波新書。呉座勇一『応仁の乱』のように、一騎当千の単発物で攻めるのが中公新書。三つ巴(どもえ)の戦いはまさに「三国志演義」の世界で、楽しい。

 藤野裕子のこの本は、中公新書の正統を継ぐ一騎当千本の一冊となろう。この書き手の独創性は、なぜこのテーマで書くのかを語ったその語り口だけからも伝わる。元となった専論『都市と暴動の民衆史』(有志舎)のあとがきで著者はいう。「なぜ彼らは路上で暴れ、私は暴れないのか」。ここにいう彼らとは、本書の主人公である民衆であり、「国家・公権力」に対して「国家を構成する人びと」のことであり、ほぼ男性からなる。

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