- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

飲酒運転のニュースで見聞きする「呼気中のアルコール濃度」という言葉。その濃度が呼気1リットルあたり0・15ミリグラム以上だと罰則の対象となるのだが、基準値未満だと運転しても大丈夫なのだろうか。事件・事故を担当する記者として確かめたいと思い、アルコール濃度を精密に計測できる検知器を手に飲酒してみた。「飲んだら乗らない」と決意することになった体験をつづりたい。【西部報道部・大坪菜々美、24歳】
0.48mg―真っすぐ歩けない
検査は計測器大手「タニタ」製の検知器を使用。専用のストローに息を吹き込むと0・01ミリグラム単位でアルコール濃度が測れる。私は普段、宴会の1次会で生ビールの中ジョッキ(またはハイボール)を4杯ほど飲むので、今回はほぼ同量の缶ビール3本(計1500ミリリットル)を飲むことにした。
8月21日午後6時半。コンビニで買ったトルティーヤ巻きとチーズをつまみにプルタブを引いた。1時間後、750ミリリットルを飲んだところで測ると0・22ミリグラムだった。基準値を超えているので、酒気帯び運転容疑で検挙される状態だ。真っすぐ歩けるが、少し頭がふらふらする。にぎやかな宴会の場ではなく社内の一室で静かに飲んでいるため酔いを自覚しやすい。
午後9時。1450ミリリットルを飲んだ時点で、酔いがかなり回り、これ以上飲めなくなった。数値は0・48ミリグラム。前日も検知器の作動を確認するために同じ量を飲んだからか、週末で疲れがたまっていたのか、気をつけないと真っすぐ歩けないほど酔った。飲むのをやめて30分たつと、数値は0・24ミリグラムに下がったが、具合は悪化し、寒気も覚えた。ちなみに、9月22日に酒気帯び運転の疑いで現行犯逮捕されたアイドルグループ「TOKIO」の元メンバーから検出されたのは0・75ミリグラムだった。
タクシーで帰宅した後の8月22日午前1時半、数値はようやく基準値を下回り0・06ミリグラムになった。検挙はされないが「警告」対象の数値だ。実際、頭はぼんやりしたままで足取りは元に戻った気もするが今ハンドルを握るのは危険だと感じた。数値がゼロになったのはさらに1時間後の午前2時半だった。飲み終えてから5時間半が経過していた。
0.19mg―飲まない人「吐き気が」
呼気検査は入社6年目の一宮俊介記者(30)も試した。普段はあまり飲まないという一宮記者は2時間半かけて梅酒(アルコール度数14度)350ミリリットルを飲んだ時点で「吐き気がする」とうめいた。「数値はかなり高いのでは」と予想したが0・19ミリグラム。その1時間半後にはゼロになったが、具合はかなり悪そうで「頭の血管に血が勢いよく流れている」と言うなり、宿直用のベッドに横になった。
呼気検査で実感したのは、数値が低い場合でも体が酔った状態のこともあるということだ。アルコールの影響は酒に強い、弱いという体質だけでなく、体調や飲酒日の間隔によっても変わりそうだ。罰則基準を下回れば「運転しても大丈夫」と考えるのは誤りで「一滴でも飲酒運転」と改めて肝に銘じた。
飲酒運転事故件数の減少ペースが全国的に鈍化している現状を踏まえ、福岡県は、罰則対象外の基準値未満の運転者対策に全国で初めて乗り出す。基準値未満でも「警告」を繰り返し受ければ、アルコール依存症の受診などを義務づける全国初の改正条例が2021年6月までに施行される。
ちなみに一宮記者が福岡県警のある幹部から基準値未満の数値は「奈良漬けでも人によって出る」と聞いたというので別の日に市販品を50…
この記事は有料記事です。
残り1899文字(全文3370文字)