政治的下心のため経済政策を利用した“アホノミクス”の大罪 浜矩子氏が斬る「景気回復」
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7年8カ月続いた安倍政権の支持率を支えてきたのが、「景気が良くなり、株価も上がった」といった経済回復のイメージではないか。だが、安倍晋三前首相の経済政策を「アホノミクス」と辛辣(しんらつ)に批判してきた浜矩子・同志社大大学院教授は「政治的な下心の手段に、経済政策を利用した」と容赦がない。一体何が問題なのか。縦横無尽に語ってもらった。【坂井隆之/統合デジタル取材センター】
真の狙いは「21世紀版大日本帝国」の基盤作り
――まずは総論から。経済政策の面から見た安倍政権の功罪をどう考えますか?
◆「功」は無くて、「罪」のかたまりとしか言えませんね。結局のところ安倍政権にとっての経済政策とは、彼がずっと抱き続けてきた政治的下心、すなわち「戦後レジームからの脱却」を実現するための手段でしかなかった。戦後的枠組みから脱却するには戦前に戻るしかない。つまり「21世紀版大日本帝国」の強くて大きな経済基盤を作ることが、アベノミクスに託された実際の狙いだったわけです。金融・財政政策もそうですし、「1億総活躍」「女性活躍推進」「働き方改革」など、すべてのものがそのために繰り出されてきた。そう思わざるを得ません。
――問題点をもう少し具体的に教えてください。
◆いみじくも安倍さんは就任早々に「日本を世界で最も企業が活動しやすい国にする」という趣旨のことを発言しました。これを実行に移したのが、「働き方改革」です。労働法制で手厚く守られているところから労働者を掘り出して、大企業のために役立つフリーランスを作り出す。労働コストの上昇なき生産性上昇を大企業にプレゼントするため、「柔軟で多様な働き方」を推進するのが、当初からの狙いです。「女性の活躍推進」や「人生100年時代」の高齢者の就労支援も、安い賃金でそれなりの技能を持っている人たちを、制約なくこき使うため。そういう脈絡で全てが展開されてきたと言えます。
――一方で、GDP(国内総生産)は回復し、有効求人倍率などの雇用指標や企業業績も大幅に改善しました。目的はどうあれ、結果的に景気が良くなったのだからいいじゃないか、という声もありますが。
◆それについては二つのことが言えると思います。まず景気が良くなったと言いますが、本当にそうなの…
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