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「心が騒ぐような情報からは距離を」 相次ぐ著名人の自殺報道、専門家が助言

厚生労働省=東京都千代田区霞が関で

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 女優の竹内結子さん(40)が死去したニュースが27日、テレビのニュースや新聞、インターネットなどで大きく報じられた。現場の状況から自殺とみられるという。相次ぐ著名人の自殺報道に、自殺対策の専門家は「動揺している人も多いと思いますが、触れると心が騒ぐような情報からは距離を置いて、気持ちが落ち着くように努めて」と呼びかけている。一方、厚生労働省などは同日、自殺報道が過熱化しないよう改めて求める文書を報道機関向けに出した。【上東麻子/統合デジタル取材センター】

今年1月に男児を出産したばかり

 竹内さんは、27日未明に東京都渋谷区の自宅でぐったりした状態でいるのを家族が発見。搬送先の病院で死亡が確認された。警視庁は現場の状況から、自殺を図ったとみて調べている。

 竹内さんは1996年にデビューし、99年10月からのNHK連続テレビ小説「あすか」でヒロイン役に。2004年には「いま、会いにゆきます」で歌舞伎俳優の中村獅童さんと共演し、05年に結婚、男児を出産したが、08年に離婚。19年、俳優の中林大樹さんと結婚し、今年1月に男児を出産。7月公開の映画「コンフィデンスマンJP プリンセス編」に出演していた。

専門家「コロナ禍で心理的に不安な人が多い、なおさら心配」

 今年に入り、5月にはテレビ番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さん(22)、7月には俳優の三浦春馬さん(30)、9月には女優の芦名星さん(36)が亡くなっている。いずれも自殺とみられる。

 自殺対策の調査や地域支援などを行う厚労相指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」の清水康之代表理事は、「芸能人の方でもそうでなくても、身近な人の自殺は残された人たちに非常に大きな影響を与えます。影響を受けた芸能人の方が、心理的に不安定になって自殺で亡くなることがあっても何ら不思議ではありません」と指摘する。

 そのうえで著名な人物の自殺が人々に与える影響について、「二つのことを懸念しています。一つは、多くの人が『自分の知り合い』を自殺で亡くしたような感覚に陥って、心理的に非常に大きな影響を受けること。二つ目は、報道がセンセーショナルなものになり、心理的に不安定な状況にある人や、子ども、若者に対して『自殺すれば楽になれる』といった誤ったイメージを抱かせ、自殺行動の方向に背中を押すことになりかねないことです。コロナ禍で心理的に不安になっている人が多い状況なので、なおさら心配です」という。

厚労省はWHOガイドライン踏まえた報道を要望

 厚労省と、いのち支える自殺対策推進センターは27日、「著名人の自殺に関する報道は『子どもや若者の自殺を誘発する可能性』があるため」として、WHO(世界保健機関)の「自殺報道ガイドライン」を踏まえた報道の徹底を求める要望書を発表した。

 自殺報道ガイドラインでは、著名人の自殺を報道する際には特別な配慮を求めている。自殺手段や場所を詳細に説明しないなどの他、「有名人の死として考えられる原因を、メディアが不確かな情報に基づいて推測することで悪影響を及ぼす可能性がある。死の原因が知られるようになるまで待つこと」などと明記されている。

 最近では、ガイドラインが周知されつつある一方で、今回も一部メディアでは自殺の方法や詳細な場所が記されていた。また、竹内さんが1月に出産したことから、ツイッター上では、「産後うつ」がトレンド入りするなど、死因についての臆測が広がっている。

 清水さんは、「ガイドラインに示されている『やるべきでないこと』は少しずつ浸透してきているように思えます。ただ、どこに支援を求めるかについて正しい情報を提供したり、日常生活のストレスや自殺したくなる気持ちへの対処法、支援を受ける方法について報道したりするといった『やるべきこと』をもっと積極的に行ってほしい」と訴える。

 その上で、報道に触れて不安を感じている人たちに対してはこう呼びかける。

 「テレビやメディアに接する時間を減らして、報道から距離を置きましょう。情報にあまり触れすぎないこと。好きな音楽を聴いたり、気持ちが落ち着くように努めたりしましょう。不安な気持ちを誰かに聞いてもらったり、不安な気持ちを紙に書き出したりすることで心が楽になることもあります。もし、動揺しているだろうと思う人がいたら、連絡して気持ちを聞いてあげてください」

安田菜津紀さん「心が疲れた」時に見たいアニメや絵本を紹介

 フォトジャーナリストの安田菜津紀さんは27日、「心が疲れた」「なんだかしんどい」というときに見たいアニメや絵本、マンガなどの書籍を紹介したエッセーをツイッターに再投稿した。エッセーは芦名さん死去の報道があった今月14日に書かれたものだ。心がほっこりするアニメーションや、心を病む患者と向き合う精神科看護師を描いた漫画、内閣府の自殺防止キャンペーンソングに採用されたワカバの「あかり」のプロモーションビデオ(PV)などが紹介されている。PVは、他人に傷つけられて自分の殻に閉じこもった人間が、誰かに見つけられ再び歩き出すアニメが流れる。歌詞には、「負けてもいいよ」「でも自分を投げ出さないで」と優しい言葉がちりばめられており、「どうか、消えないで」というメッセージが心に染みる。

 安田さんは、「報道や表現にできることは、『自殺以外の出口』を提示することや、悲しみや苦しみを抱える心を少しでも解きほぐしていくような『命綱』になれるよう努めること」と書いている。

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上東麻子

1996年毎日新聞入社。佐賀支局、西部本社、毎日小学生新聞、東京本社くらし医療部などをへて2020年から統合デジタル取材センター。障害福祉、精神医療、差別、性暴力、「境界」に関心がある。日本新聞協会賞を受賞したキャンペーン報道「旧優生保護法を問う」取材班。共著に「強制不妊」(毎日新聞出版)。散歩とヨガ、ものづくりが好き。

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