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カセットテープ・ラジカセ 刻まれた「思い」大切に 愛を語るマニア「今も現役です」

コレクションのほんの一部と高瀬譲さん=三重県志摩市阿児町の自宅で、尾崎稔裕撮影

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 カセットテープとラジカセは、1970~80年代に青春を過ごした音楽ファンにとって忘れられないアイテムだ。デジタル音源が主流となった現在、カセットはオーディオ界の絶滅危惧種となった。「え? ぼくにとっては現役ですけどね」。カセットとラジカセを偏愛する会社員、高瀬譲さん(51)=三重県志摩市阿児町鵜方=の「カセット愛」トークはとどまるところを知らない。【尾崎稔裕】

 自宅には約400台のラジカセやデッキが並ぶ。「製造中止の機器ばかりで、メーカーも修理を受け付けてくれない。故障したら自分で直すしかないんです」

 高瀬さんによると、カセット・ラジカセのマニアの世界は細分化され、機器のメカニックやデザインにこだわるタイプ、カセットのメーカーや種類に注目するコレクターなど、「めでどころ」はさまざま。

 高瀬さんがこだわるのは録音済みのカセット。添えられたラベルのデザインや手書きの文字、所有者の思いが濃厚に感じられる音源が封じ込められた“痕跡カセット”といえる。

 コレクションは膨大だ。「4000本まで数えたら、もう疲れちゃって」。何本を所有しているのか自分でもわからない。不燃物のごみとして捨てがたいのか、持ち主が大量のカセットをオークションに出品したり、リサイクルショップに持ち込むことも多い。その中にお宝が埋もれているという。

 大手企業の本社役員が出先の企業戦士たちに売り上げアップを号令する朝礼テープや、各駅停車の電車の車内案内。一般には出回らないカセットから昭和の香りが立ち上る。

 分娩(ぶんべん)室での録音には、泣き声を上げて生まれてくる赤ちゃんと母親のほっとした声。その赤ちゃんが成長して覚えたての童謡を歌う様子。

 若い男性によるギターの弾き語りは、思いを寄せる女子に手渡したカセットらしい。70年代末ごろに流行した「丸文字」で「マイ・ベスト」の手書きラベルのあるカセットは当時のラブソングの詰め合わせ。女子が意中の男子にプレゼントしたのか。いくつもの遠い日の花火がラジカセから再生される。

 ネットからダウンロードする音源には、それがない。痕跡カセットコレクションには、昭和最後の約20年間が凝縮されている。再生すれば、誰かの昭和と自分の昭和が交錯する。

 これまで2回、高瀬さんは再生機器や痕跡カセットのコレクションを展示する「カセット展」を県内で開催した。高瀬さんのカセットトークは好評だった。同好の士が多いのには驚いたという。今年の開催はコロナ騒動で見送った。「落ち着いたらやります。その時はカセット談議で盛り上がりたいなあ」

高瀬譲(たかせ・じょう)さん

 川崎市出身。神奈川県内のケーブルテレビ局を経て35歳で志摩市に移住。現在は松阪ケーブルテレビ・ステーション勤務。「この世界の魅力って理解してもらいにくい。だから伝道師を目指しているわけじゃない。マニア同士で深く楽しいトークで盛り上がるだけで、ぼくは幸せなんです」

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