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「幻の橋」美しいアーチ見納め? 損傷進むタウシュベツ川橋梁 旧国鉄士幌線

上流側から望むタウシュベツ川橋梁の全景=北海道上士幌町で2020年9月23日、山本直撮影

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 時に水没するなど四季折々の姿を見せ「幻の橋」とも呼ばれている北海道上士幌町のコンクリートアーチ橋、タウシュベツ川橋梁(きょうりょう)で今春、3年ぶりの大きな崩落が起きた。文化財の指定を受けておらず、補強はできない状態。これから冬場にかけて更に傷みが進むとみられ、関係者は「美しいアーチの連なる姿も見納めかも」と懸念している。

写真愛好家や廃線マニアに人気

 タウシュベツ川橋梁は旧国鉄士幌線に架かり、1937年に完成した。全長約130メートルは同線の橋梁群で最長。高さは約10メートルあり、柱間10メートルのアーチが11基連なる。糠平ダムの建設に伴いダム湖の西岸に新線が敷設され、55年に役割を終えた。

 その後、ダム湖内に放棄されたが、古代ローマの遺構を思わせる姿のまま残存。水位の変化で完全に水没したり、アーチが湖面に映って「めがね橋」に見えたりすることから、写真愛好家や廃線マニアが訪れるようになった。2008年にJRのポスターに採用され、人気が爆発。森林管理署の許可がないと車で近寄れない秘境感も相まって、今では年間を通じて多くの観光客が見学ツアーに参加する他、冬場には凍結したダム湖を渡って訪れる。

タウシュベツ川橋梁周辺には近付かないようロープが張られている=北海道上士幌町で2020年9月23日、山本直撮影

 ところが、氷点下20~30度に下がる冬場、コンクリートに染み込んだ水分が凍って膨張し、内部から劣化が進んだ。同時に、厚さ70センチにもなる湖面の氷が水位の低下に伴って下がり、外部を浸食。03年9月の十勝沖地震で一部崩れた後はやや沈静化していたが、17年4月に橋の上部が崩落。今年4月にも2カ所でコンクリートが大量に落ちてアーチの一部は鉄筋が露出、相当薄くなっている。

毎年のように氷漬け、抜本的対策なく

 上士幌町などによると、この橋と同時期もしくは昭和30年代に建設された士幌線の七つの橋は国の登録有形文化財に指定されている。しかし、ダムを管理している電源開発(東京)は文化財指定を望んでいない。また、傷みの進行を止めようにも毎年のように氷漬けになるサイクルを止める他に抜本的な対策はなく、打つ手がないという。

今年4月に崩落した部分。アーチが薄くなり、下にがれきが積もっている=北海道上士幌町で2020年9月23日、山本直撮影

 電源開発の広報担当は「橋梁は国鉄が放棄したもので、いわば廃墟(はいきょ)。ダム湖は管理下にあるが、橋梁を管理しているのではない。地元から保存に関する要望があるわけでもなく、対応は考えていない」としている。

 ツアーを主催しているNPO法人ひがし大雪自然ガイドセンターの河田充代表(60)は「所有者不在の上、壊れるのが分かっているのでは直せない。『案外壊れそうで壊れないものだ』という専門家もいるが、劣化のスピードは速まっており、特に水没した翌春は危ない。地震でもあれば、もうだめだろう」と話している。【山本直】

旧国鉄士幌線とコンクリートアーチ橋梁群

 士幌線は十勝北部の森林資源と農作物の輸送を主目的に帯広―上士幌間が1926年に開通、39年に十勝三股まで延びた。総延長78・3キロ。工事費用を抑えるため現地調達できる砂や砂利を用いたコンクリート橋とし、大雪山国立公園内の渓谷美に調和するアーチのデザインを採用した。木材需要と住民の減少で78年に糠平―十勝三股間がバス転換され、87年に全線廃止。地元の熱心な運動で約30の橋梁群は保存され、2001年、北海道遺産に選ばれた。そのうち7橋梁はトンネル1、駅跡1と共に国の登録有形文化財となっている。

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