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障害者施設が4人を強制退所 サービス改善要望で「信頼崩れた」 群馬・伊勢崎

4人の保護者に届いた解約を通知する文書=鈴木敦子撮影

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 障害者の通所施設などを運営する群馬県伊勢崎市の社会福祉法人「樫の木」が、サービス内容の改善を求めて市に相談した利用者4人に対し、一方的に利用を停止していたことが、市や関係者らへの取材で分かった。4人は退所後、新たな施設がなかなか見つからず、保護者が日中の介助のために退職や休職を余儀なくされ、生活が困窮した人もいる。保護者たちは「障害者は不満を口にしてはならないのか。弱者の声は社会に届けることすらできないのか」と訴えている。

法人「裏切られた気持ち」

 「樫の木」は市内で障害者の通所施設や放課後等デイサービスなど6施設のほか、2012年度からは市の指定管理者制度で伊勢崎市こども発達支援センターを運営している。

 関係者によると、4人は通所施設を利用していたが、16年2月に法人からサービスの縮小や削減を告知された。法人側は保護者説明会で「人手がかかる支援はできない」などと説明したが、納得できず4人の各保護者は8月に市役所を訪れて障害福祉課に相談し、意見や要望をまとめた文書を提出した。

 翌9月、この4人の自宅に法人から「支援を継続することは困難」「契約は9月末日をもって全て解約」という内容の通知が届いた。保護者たちは市役所を通じて方針撤回を求めたが、法人の方針は変わらず、4人は9月末で施設の利用を止められた。

 突然の事態に4組の家族は混乱に陥ったという。障害が比較的重度のため対応できる施設が少なく、次の施設が見つかるまで半年から2年間、在宅生活を強いられた。その間、保護者は仕事を辞めたり休んだりして付き添い、母子家庭では経済的に追い詰められたという。

 保護者たちの精神的ショックは大きく、「どこにも出られず親子で社会的に孤立し、絶望した」「なぜこんな仕打ちを受けなければならないのかと途方に暮れ、人間不信になった。これからどうすれば良いのだろうと毎日が不安だった」と振り返る。子どもを虐待しそうになったと打ち明ける保護者もいる。

 利用を停止した理由について、法人の岡部真砂美理事長は今年9月、毎日新聞の取材に「長年うちを利用してくれていた子どもの保護者が市役所に行ったと知り、裏切られた気持ちになった。保護者と法人・施設との信頼関係が崩壊した」と説明した。一方、「気持ちをリセットして10月から契約するつもりだったが、向こうが(再契約の)意思を示さなかった」と強調した。しかし、保護者側は「再契約についての説明は一切なかった」と主張している。

施設の方が「立場が上」

 重度障害者やその家族は弱い立場に置かれやすい。ある施設の職員によると、対応できる施設や職員が比較的少なく利用者側の選択肢が限られるため、家族は「みてもらっている」という負い目を感じ、施設の方が「立場が上」のようになってしまうという。

 社会福祉法人「樫の木」(伊勢崎市)では2011年、NPO法人から社会福祉法人に移行する際、利用者らから計1000万円の寄付を募った。1口50万円。ある保護者は事務所に何度も呼び出され、理事長から「お宅はいくら出せるの」「そんな額じゃ話にならない」と詰め寄られたと証言する。理事長は「寄付は頼んだが、強制はしていない」としているが、この保護者は「日ごろから『お宅のような重度の子はうちの法人でしかみられない』と言われ逆らえる雰囲気ではなかった」と明かした。

 利用者と施設、両者は本来は契約を交わして対等な関係のはずだ。必要な支援を気兼ねなく受けられるようにするには利用者側の選択肢を増やすことが欠かせない。誰もが障害者やその家族になる可能性がある。「公助」を優先させて取り組むべき課題だと思う。【鈴木敦子、大澤孝二】

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