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地価が3年ぶりに下落 コロナ禍の波及に注視を

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 新型コロナウイルスの感染拡大で不動産の収益力が低下し、その影響が地価にも波及してきた。

 国土交通省が発表した7月1日時点の基準地価は、全国平均(全用途)で3年ぶりに下落した。昨年まで7年連続で上昇していた3大都市圏も、年明け以降は下落に転じたとみられる。

 東京五輪に向けて、ホテルやオフィスの建設が続いていたところを、コロナ禍が直撃した。

 インバウンド(訪日外国人観光客)需要ははげ落ち、景況感が悪化して消費は低調だ。家賃の支払いに窮する事業者は多く、不動産の「稼ぐ力」は弱まっている。

 テレワークの導入で事務所を縮小する動きも加わり、オフィス需要にも影響が出ている。東京都心では空室率の上昇が続く。7月には、東京圏からの人口流出が流入を上回った。

 経済や社会の変化が土地利用にどのような影響を与えるかを、見極めなければならない。

 そもそも、ここ数年の地価上昇に対しては、不動産取引の過熱感も指摘されていた。

 超低金利の中、金融機関は相対的に利回りの高い不動産ビジネスに傾斜していた。関連する融資残高は、バブル期を上回る水準だ。

 物件の転売で利ざやを稼ぐような取引が横行しているわけではない。ただ、一部の金融機関は、借り手の返済能力を軽視して投資用不動産取引への融資を増やし、損失を発生させた。金余りのひずみが生じていたのは明らかだ。

 日本は人口減少社会に突入し、災害などのリスクも抱える。潜在成長率は低水準で推移し、地価には下落圧力がかかりやすい。

 こうした構造的な問題は、金余りやインバウンド需要によって覆い隠されていたが、コロナ禍で表面化してきた。

 景気低迷が長期化すれば、不動産事業の収益がさらに悪化し、地価の下落が続く可能性がある。

 資産デフレに陥って企業や投資家の心理が冷え込み、銀行の収益悪化によって金融システムが不安定になる事態は避けなければならない。

 不動産の実需や投資資金の流れの中に、重大な経済変調の兆しが潜んでいないか。政府や日銀は細心の注意を払う必要がある。

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