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オンライン講座の答え合わせは、講師(右上)が修正例を画面で示しながら解説します=毎日文化センター(大阪)提供

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ミス見逃さぬ読み方は 好評「校閲オンライン講座」

8月の校閲講座の参加者(一部)です。講座の終わりにスクリーンショットタイムを設け、新聞校閲体験で取り組んだゲラを掲げて記念撮影をしました=毎日文化センター(大阪)提供

 毎日新聞校閲センターと毎日文化センター(大阪)は、およそ2カ月に1回、校閲講座を開いています。新型コロナウイルス感染防止のため6月からオンライン化。ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」を利用し、前半は講義、後半はゲラを使っての実践です。全国や海外からも受講可能になり、8月は午前、午後の回を合わせて300人超が参加しました。今日は読者向けに紙上ミニ講座を用意しました。腕試しに挑戦してみてください。 

 講座で呼びかけているのは「校閲モードに切り替えて読む」こと。時間を決めて集中して読みます。読み方は目的によって変わります。執筆者の読み方、編集者の読み方、読者の読み方……。校閲はいずれとも異なり、執筆者と読者の間に立って客観的に読みます。一字一句をなぞり、不備を見逃さない。かつ全体を見渡して文脈上の食い違いがないように気を配ります。

 それでは次の文章を読み、誤りを正してみましょう。制限時間は2分です。

 「ウイルスが自己増植できないことは、従来から知られてている。生物の細胞に進入し、その細胞にウイルスの遺伝子情報を転写することで増えるのだ。病原性となるウイルスがある一方で、宿主とウイスルの双方に役する賢い生存戦略を取る場合もある。」

 いくつ見つかりましたか。校閲の鉄則は「誤りの隣に誤りあり」。直せたと安堵(あんど)するとその隣の誤りを見逃します。さあ、答え合わせです。

 「ウイルスが自己増植できないことは、従来から知られてている。生物の細胞に進入し、その細胞にウイルスの遺伝子情報を転写することで増えるのだ。病原性となるウイルスがある一方で、宿主とウイスルの双方に役する賢い生存戦略を取る場合もある。」

(1)植の字が誤り。正しくは「増殖」。同音異字に注意です。

(2)重複表現。「従来」「以前から」などと直します。

(3)平仮名「て」がダブり。一つ削除します。行末から行頭にかけての字のダブりや脱字は見逃しやすいです。

(4)正しくは「侵入」。不法に押し入る、他の領分を侵すという意味です。同音異義語として、進入(進み入る)、浸入(ひたし入る、水が入る)。

(5)片仮名の入力ミス。もちろん「ウイルス」と直します。片仮名や平仮名の誤植は、脳が補って読んでしまうためか見逃しやすいんですよね。

(6)「役する」は使役するという意味。ここは文脈から推測すると、同音で意味の異なる「益する」(利益を与える、役に立つ)の方が適切。

      ◇

 いかがでしたか。校閲講座の受講者は、校正者はもちろん、書く仕事に関わる人、企業の広報担当や秘書、カタログ製作担当、教員や学校司書、税理士、会計監査人など実にさまざまです。「上司に書類のチェックをよく頼まれる」という声もありました。仕事の基本的なスキルとして校閲を身に付けようという意識があるようです。日本語の使い方に悩んでいる方、文章チェックのトレーニングをしたい方、ぜひ校閲講座にご参加ください。次回の開催は10月24日午後6時半~8時半です。詳細は毎日文化センター(大阪)のサイトやツイッターでご確認ください。【沢村斉美】

片仮名語は新聞の天敵?

 この春から、紙面に片仮名語が増えてきました。新型コロナウイルスの関連でソーシャルディスタンス、パンデミック、クラスター……。政府の発信する言葉をそのまま書いているからでもありますが、片仮名語は意味がわかりにくく、字数も多くなったりして新聞の“天敵”。社会的距離、世界的大流行、感染者集団と言えばいいのに。

 「片仮名語にも利点があるんですよ」。先日、ある講座で三省堂国語辞典の飯間浩明編集委員と対談をしたときに意外なことを言われました。「熟語はイウキクチツンになるので」

 イウキクチツン? 何のおまじないですか。

 飯間さんは続けます。「目で見ると漢字の方が頭に入りますが、耳で聞くとマイナスの面もあるんです。2音で読む漢字は2音目がイ、ウ、キ、ク、チ、ツ、ンのどれかになるので同じように聞こえます」

 左の表にある語から2音で読む漢字を挙げてみます。会(カイ)、的(テキ)、界(カイ)、大(ダイ)、流(リュウ)、行(コウ)、感(カン)、染(セン)、集(シュウ)、団(ダン)、爆(バク)、発(ハツ)、拡(カク)、警(ケイ)、報(ホウ)、封(フウ)……確かにイウキクチツン。これに対して、片仮名語は音が多様で印象に残りやすいわけです。

 一方、政府側の打ち出した言葉でも「新しい生活様式」はなぜか片仮名語ではありません。2人で話しながら「『新しいライフスタイル』にしようとしたが、誰かが『片仮名語が出過ぎたから生活様式にしましょう』と言ったのかも」などと推理してみました。

 様式は「ゴシック様式」「様式美」と使われ重々しい感じがして、飯間さんも「『江戸時代の生活様式』というように学術的にも聞こえます」。わざと片仮名語を避けたのかはわかりませんが、軽くも感じる「ライフスタイル」よりは印象に残る成功例なのかもしれません。

 インパクトにはかないませんが、わかりやすさも捨てられません。目くじら立てず、せっせと注釈を入れながら天敵とうまく付き合っていくのも新しい校閲様式なのかな。【平山泉】

新型コロナ関連で登場した主な片仮名語

ソーシャルディスタンス 社会的距離

パンデミック      世界的大流行

クラスター       感染者集団

オーバーシュート    爆発的な感染拡大

(東京)アラート    警報

ロックダウン      都市封鎖

時代に沿った改訂 「新明解国語辞典」第8版

取材に応じる三省堂の山本部長(左)と吉村さん=東京都千代田区で2020年9月8日午後1時4分、上田泰嗣撮影

 三省堂の「新明解国語辞典」第8版が11月、全国で発売されます。約9年ぶりの改訂で「IoT」「ヘイトスピーチ」など約1500の新語・新項目が追加されました。

 新明解は刊行以来累計2200万部を発行している“最も売れている小型辞典”です。ユニークで実感あふれる語釈でも知られます。

 今回の改訂で変更された語釈のひとつに「恋愛」があります。第7版は「特定の異性に対して他の全てを犠牲にしても悔い無いと思い込むような愛情をいだき……」としていました。しかし、第8版では書き出しの「特定の異性」が「特定の相手」に変わりました。

 恋愛で思いを寄せる対象は「異性」とは限りません。辞書が「異性」と記述することで、同性に恋心を抱く人や、性別を持たない人の存在が見えなくなってしまいます。同社辞書出版部の吉村三恵子さんによると、性的少数者や性的役割分担に関わる記述を大幅に見直し、手を入れたとのこと。「著者の先生方を説得するのは大変でしたが、若い学生たちから寄せられた意見が後押しになりました。時代に沿った改訂になったと思います」と話していました。

 また、従来載っていた語についても語義や補説を増やしたものが多くあります。「聖地」や「沼」といった語に、新たに派生した用法として「(野球ファンの)聖地」や「沼(=没頭している趣味)」などを加えました。

 三省堂辞書出版部の山本康一部長は「新明解国語辞典」のスタンスについて「一貫して、語の意味とは何かを追求している」と言います。その語の社会的な評価や背景まで踏み込んで書かれた語釈は、深い思索の産物。「読む人には、時には反発を覚えたり、自分自身に改めて問いかけてみたりするなど、言葉について考える契機としてほしい」と願っています。

 第8版の発売は11月19日。装丁は赤、白、青の3種類で定価3100円(税別、小型版は2900円)。【塩川まりこ】


「毎日新聞用語集」電子書籍発売

 毎日新聞校閲センターは、電子書籍「毎日新聞用語集2020年版」を発売しました。

 「辞職と辞任の違い」「断つ・絶つ・裁つの使い分け」「オーストラリアの首都名」――分かりますか。正確で分かりやすい日本語を書くための表記の手引や、混同・誤用しやすい語、資料集など、役立つ情報が満載です。

 市販されている新聞・出版社の用語集では唯一、全文検索ができる電子書籍です。アマゾン・キンドルでの発売で、価格は990円です。お問い合わせはkotoba@mainichi.co.jpまで。

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