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安倍政権が残したもの

「責任痛感芸」繰り返した不誠実な人 武田砂鉄さんがなお問い続ける「首相の言葉」

武田砂鉄さん=東京都千代田区一ツ橋で、山下浩一撮影

 国会論戦では野党に感情的にやじを飛ばし、批判する国民を「こんな人たち」と突き放す。安倍晋三前首相が第2次政権を担った7年8カ月、政治の場で熟成した議論を聞くことがずいぶん減ったように感じる。著名人の言葉や日常のささいな違和感から社会の問題を切り取ってきたフリーライターの武田砂鉄さんは、安倍氏について「疑惑をやり過ごし、ウソをつき続けることで説明責任から逃れてきた」と評する。「言葉」を軸に、安倍政権と今の政治状況を論じてもらった。【野村房代/統合デジタル取材センター】

排他性を隠すために「オリジナルの言葉」を封印

 ――この7年8カ月で、印象に残っている安倍氏の言葉は何でしょうか。

 ◆まず後半の数年において、安倍さんが「オリジナルの言葉」を発する場面はほぼなかったと思います。真っ先に頭に浮かぶのは、記者のぶら下がり取材にまともに答えず、足早にその場を立ち去ろうとする後ろ姿。公式会見ではあらかじめ用意された言葉に準じて述べているだけで、それ以外に質問される機会、自分の言葉を発する機会をいかに少なくするかに腐心していたようにさえ感じました。

 そんな数少ない「オリジナルの言葉」の中で、安倍さんの本音が図らずも露呈してしまった一言があります。森友学園の問題が取りざたされていた2017年7月、東京都議選の街頭演説で、聴衆の「辞めろ」コールに対して放った「こんな人たちに負けるわけにはいかない」という言葉です。

 また近いところでは、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言発令を発表した4月7日の会見での言葉にも、似た性質が読み取れました。イタリア人記者から「ロックダウンしない日本の対策がもし失敗だったら、どのように責任を取るのか」と問われ「私が責任を取ればいいというものではありません」と反論しました。続けて「お国(イタリア)と比べて感染者の方の数も死者の数も桁が違う状況」とし「海外の国々と違って」クラスター対策をやっている、と強調しました。そこには「私たち」と「あなたたち」とを線引きし、自分たちはスゴイと思い込む考え方がある。自分の味方は大事にするがそうでない者を外に置く、そうしたメンタリティーは、今の日本全体を包み込む空気とつながっています。

――自分の言葉を発すると、ボロが出てしまう。それを避けていたということですか。

 ◆そう思います。安倍さんという人は、議論を戦わせるだけの論理的な体力がなく、やたらと感情的になって「(森友学園の国有地売却に)私や妻が関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」といった大きなことをとっさに言ってしまう。「私や妻」が関わっていたわけですが、そうしたウソを平気でついてしまう。本人もそのことに気付いていたはずで、なるべくオリジナルの言葉を発しないよう注意を払っていたように見えます。自分を批判する相手に対して、すぐ排他的、挑発的な言葉が出てしまうことを恐れていたのではないでしょうか。結果として、彼が本当は何を考えているのか、最後まで見えてきませんでした。

――「大きなこと」の例として、武田さんは安倍氏の著作タイトルなどにも注目されていますね。

 ◆『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』『この国を守る決意』『美しい国』など、なんだか実態はよくわからないけど一見すごそうな言葉を好んで使っています。コロナ禍の中の会見でも、緊急経済対策を「世界最大級」、…

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野村房代

2002年入社。岡山支局、東京・生活報道部などを経て20年春から統合デジタル取材センター。ファッション、アート、カルチャーについて主に取材。また、障害や差別など光が当たりづらいマイノリティーの問題に関心がある。1児の母。共著に「SNS暴力 なぜ人は匿名の暴力をふるうのか」(毎日新聞出版、2020年9月発売)

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