川辺川ダム必要論再燃 流域市町村首長ら、球磨焼酎囲み語った3時間 九州豪雨
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9月28日夜、熊本県錦町の結婚式場に、7月の九州豪雨で氾濫した球磨(くま)川流域の10市町村長をはじめ、地元選出の自民党国会議員や県議が顔をそろえた。公式にはオープンになっていない会合で、予算に関する地元の要望を国会議員に伝えるため首長や県議側が呼びかけた。
球磨焼酎を飲みながら3時間近くにわたった会合では、豪雨で被災したJR肥薩線の復旧問題などとともに、川辺川ダムの建設も話題に上った。球磨川支流の川辺川に建設が予定されていた川辺川ダム計画は、旧民主党政権時代に中止になったが、豪雨後、にわかに必要論が再燃している。
会合は非公開だったが、複数の出席者によると、ある首長がダム建設のためには流域市町村が一致する必要があると訴え、金子恭之(やすし)衆院議員と松村祥史(よしふみ)参院議員もダム建設の必要性に言及。松村氏は会合後の取材に、ダム建設は特に話題にならず「復興を頑張りましょうということだった」と述べたが、複数の出席者は、松村氏が元県議会議長でダム推進派だった父親(故人)への思いにも触れながら話していたと証言する。
川辺川ダム計画は2008年に熊本県の蒲島郁夫知事が「白紙撤回」を表明し、翌年、旧民主党政権が中止した。知事の決断の背景には、ダム本体の建設予定地だった相良(さがら)村の村長や最大受益地でもある人吉市の市長の反対表明があったが、両首長とも既に交代している。
「前回のように一つの市町村でも否定的になれば、ダムはできない。互いの動きに不信感が出ないようまとまることが大事だ。お酒を酌み交わしながら本音で話しあえたことでダム建設に向けて前進した」。国会議員らとの会合を終えた後、ダム建設に積極的な首長の一人は満足そうに語った。
ダム建設「一枚岩」にも慎重論
「一人もこぼれることなく団結している」。9月18日の熊本県議会本会議。自民党会派を代表した質問で、松田三郎県議は7月の九州豪雨で氾濫した球磨川の治水対策として川辺川ダム建設を検討するよう蒲島郁夫知事に迫った。被災地の球磨郡選出で、党県連幹事長も務める松田氏は「今回の豪雨災害で民意も大きく変わった。住民を代表する市町村長の意見を最大限に尊重すべきだ」と続けた。
豪雨後、球磨川流域自治体の動きは早かった。球磨郡の9町村と中下流3市町の12市町村でつくる「川辺川ダム建設促進協議会」は豪雨から1カ月半後の8月20日、「川辺川ダム建設を含む抜本的な治水対策を講じるべきだ」と決議。流域自治体が一致してダム建設を求める方針を表明した。
2008年に川辺川ダム計画を「白紙撤回」した蒲島知事は、豪雨翌日の7月5日に「ダムによらない治水を極限まで検討する」と改めて強調したが、流域自治体から突き付けられた「総意」を無視できなくなった。8月26日の記者会見で「ダムも選択肢の一つ」と述べ、川辺川ダム反対の姿勢を事実上転換した。
ただ、ダム建設で「一枚岩」に見える市町村長の中にも慎重意見はある。「川辺川ダム建設を含む治水対策」の決議に名を連ねた首長の一人は「十分な議論もしない…
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