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エンタメノート

「やり続けるしかない。あきらめず場を作る」 柳家花緑さん、真柴あずきさんに聞く

柳家花緑さんと真柴あずきさん=東京都渋谷区で、油井雅和撮影

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 新型コロナウイルスの影響で、演劇も落語も大きな打撃を受け続けている。公演を開いていいのか、開くならどれだけ客を入れていいのか、そして開いたとして、はたして客は来るのか……。演じる側も関係者も、ストレスが相当たまっているだろう。

 柳家花緑さんは、さまざまな試みに挑む独演会「花緑ごのみ」を、東京・内幸町のイイノホールを押さえたにもかかわらず、無観客でネット配信する決断をした。その思いは自身のYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=PLbXkhgEen0)をご覧いただくとして、今回は、演劇集団キャラメルボックス(休団中)の真柴あずきさんが書いた新作「最後の一本」と古典の「盃(さかづき)の殿様」の2席。

 ファンタジーの世界を描くところも、開演前に携帯電話を切るよう注意するところも、キャラメルと花緑ごのみはちょっとした共通点がある。そんなお二人に話をうかがった。

     ■

無観客配信で開かれる柳家花緑独演会「花緑ごのみ」のチラシ

 --「最後の一本」は久しぶりの再演です。どんな思いで書かれたのですか。この作品で今、どんなものを伝えたいですか

 真柴 落語は自由なので、なんでもあり、の台本を書きました。物語を作る時に一番大事にしたいのは、人が人を思う気持ち。この主人公は、それにちょっと背中を向けていた男。どんなにそれが大事だったか、ということに気がつく、という物語です。今回、こういう状況の中で、人に会えなくてもいいじゃないか、人に会わないのが当たり前じゃないか、距離を取るのが当たり前じゃないか、と、人々の気持ちが離れていってるような気がして。SNS上でもけっこう荒っぽい言い合いが跋扈(ばっこ)している。でもそうじゃないでしょう。大事な誰かの手をもう一度握ろうよ、というつもりで、やっていただけるんじゃないかなあ、と思ってます。ラストシーンが私は楽しみです。

 花緑 泣けるんですよ(笑い)。

 新規の方だけを相手にするなら、練り直したものじゃなくて一年通していつもやっているものがいいのでしょう。でも、僕は、「いつも応援してますよ」というお客さんを一番に考えたい。ここまで追っかけてくださったお客さんに喜んでもらいたい時に、新しいものに取り組む、その結果を見てもらいたいと。そして新しく見てくださる方には、新しいネタで新しい人にもよろこんでもらう、チャレンジです。

 「最後の一本」の主人公も、自分を変えていく、頑張っていく姿がある。そこに自分がシンクロしないと、この作品のパワーが出ないと思います。

 --キャラメルの舞台も花緑師匠の落語も、現代性がありながら、変わらないもの、普遍性があると思います。

 花緑 僕は落語家の家に生まれたからなのか、自分の性分なのか、新しいことをしたいんです。でも、うちの師匠(祖父でもある五代目柳家小さん)のセリフなども五代目のオリジナルなんですよね、結構。

 落語のルールや基礎は師匠から受け継ぐものだけれど、外側を包む表現というか色合いというか、味付けは、オリジナルでいいと思ってるんです。でも、意外と外側の味付けを「同じものでやってほしい」と思ってる人が多いんですよね。

 こないだも「笠碁」という、師匠が得意にしていた噺(はなし)をやった時に、「ちらり小さん師匠が見えた」という評価があって。それは途中途中、フレーズをなぞってるからなんです。かなり自分でアレンジして変えてるんですが、その隙間(すきま)に師匠のフレーズがあったりするとお客さんはダブるらしくて、お客さんが「似てきた」と。

 真柴 我々は学生同士が遊んでるところから劇団が生まれたので。でも、つかこうへいさんとか野田秀樹さんの夢の遊眠社とか、影響を当然受けているわけですが、でも作品はオリジナルにならざるを得ない。

 そこで演劇が、キャラメルが、もしくは私が、ずっと持っているのは、「人は一人じゃ生きられないので」っていう思いなんです。それを手を替え品を替えやってるわけですが、落語も「人と人」じゃないですか。演者さんとお客さんが1カ所に集まって、場を作るということ。なぜそこに集うのかというと、やはり人とのぬくもりを作っていく、ということが、相通じるのではないでしょうか。

 --この先、予想もつかない時代で、みんなが迷ってる、困ってる、ストレスがたまってる……。どうやって生きていけば、と思ってしまいます。どんな心持ちでいたらいいのでしょう。

 真柴 なかなか厳しい時代ではありますが、我々はとにかくやり続けるしかないと。あきらめず、どんな形であれ、場を作っていきたい。

 東日本大震災の年の秋に東北にツアーで行ったんです。コロナと震災を一緒にするのはよくないかもしれませんが、小さな村の、小屋だけご立派なところに行ったら、親子連れが見に来てくれて、子供たちが本当にうれしそうだったんです。なんでかと言うと、お父さんお母さんと一緒に出かけるのが何カ月ぶり。みんなと一緒にでかけてみんなで一つのものをみるということが、こんなに楽しいんだと。ご両親も喜んでいらっしゃった。

 場を作ること。今回の師匠の試みもですが、そういう場を、ずっと守っていきたいと思います。

 どんなに気をつけても気のつけようのないぐらい気をつけているので、どうかしっかり食べて寝て、思い出したらまた会いに来ていただきたいと思います。

 花緑 今、「大丈夫」という人と「怖い」という人の二極化の状況になっている。先の見えないトンネルをずっと歩いているようなイメージで、トンネルを出るまでわからないし、いつ出られるかもわからない。トンネルの中で明日の自分がわからないわけで。

 うまい言葉は僕にもないですが、自分の中では落ち込まないように、暗くならないように。暗くなる材料はたくさんあるので、そっちに気持ちをひっぱられないようにしましょうということですね。

     ■

 「柳家花緑独演会『花緑ごのみvol.38』は、4日午後2時、東京・イイノホールから無観客配信。7日午後4時までアーカイブ視聴できる。3000円。詳しくはhttps://karokugonomi.zaiko.io/e/vol38へ。花緑さん自ら登場の動画「視聴チケット購入方法」はhttps://www.youtube.com/watch?v=rtyPTH3Xnt0。【油井雅和】

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