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鴻巣友季子・評 『推し、燃ゆ』=宇佐見りん著

『推し、燃ゆ』

 (河出書房新社・1540円)

アイドルへの濃厚な同化

 『推し、燃ゆ』という題名、および冒頭の「推しが燃えた。」の一文を見てもぴんとこない読者(かつての私のように)がいるかもしれないので、少し説明する。この説明が本書の本質に触れることにもなると思う。

 「燃ゆ」はネット用語の「炎上」。SNSなどの投稿に非難が集中すること。「推し」のニュアンスは説明が難しい。好きなアイドル、俳優などのことで、本作の主人公で女子高生の「あかり」は、男性アイドル「上野真幸(まさき)」の応援に全力を注いでいる――いや、自分の生活というか魂というか命、そう、命がけで彼を世に「推して」いる。「ファン」とは違うのか? fanはfanatic(熱狂的愛好)から来ているぐらいで、自分が思い入れることに重点がある。なら、「おっかけ」のこと? 「親衛隊」? 違う違う違います!

 ゼロ年代に多人数のアイドルユニット内でメンバー同士が人気の順位を競う商法が定着し、消費者の支援がメンバーのポジションに直接影響を与え、それが可視化されるようになった。あかりはバイト代を「推し」活動にほぼすべて費やす。時間も「推し」のために使えるだけ使う。そして、「肉体は重い」と言う。「推し」のいる空間ではまるで重力がなくなったようなのに。学校ではよく保健室にいる。過去には病院を受診し、「ふたつほ…

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