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国勢調査、勤務先やマンション階数、なぜ言わないといけないの? 総務省に聞いてみた

記者宅に届いた国勢調査の資料一式。記入の仕方を説明した冊子や、郵送用に調査票や返信封筒が同封されていた=2020年10月1日午後1時15分、生野由佳撮影

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 みなさんはもう回答を済ませただろうか。現在実施している国勢調査だ。将来の国の制度設計や政策立案のため、国が5年に1度行っている重要なもの。だが質問項目を見ると、勤務先の名称や居住するマンションの階数など、「一体なぜ?」と首をかしげたくなるものがある。総務省の担当者にあれこれ聞いてみた。【生野由佳/統合デジタル取材センター】

 今回の調査では9月14日、まずインターネットによる回答の受け付けが始まった。郵送での受け付けは10月1日からで、いずれも7日が締め切りだ。

 各世帯には「国勢調査調査票」などが入った青色っぽい封筒が配布されている。この調査票では「世帯員の数」や「住居の種類」など、計16項目の回答を求めている。

 私も回答しようと思い、実際にインターネットで回答をしてみた。作業としてはスムーズで10分程度で済ませることができた。氏名や国籍、自営か勤め人か、などの質問に対しては違和感なく回答できたのだが、疑問に感じたのが、勤務先の名称を書く部分だ。さらに会社名だけでなく、支社や営業所名まで書くよう細かく求めている。「そこまで書く必要があるのかな……」とためらいを覚えた。

 調査票とともに「調査票の記入のしかた」という計16ページの冊子が同封されていたので読んでみた。

 すると、「皆様の勤め先の事業を約250種類の『産業』に、仕事を約230種類の『職業』に分類して集計しています」と記されている。

 これだけではよく分からないので、総務省国勢統計課の担当者に聞いてみた。すると担当者の説明はこうだった。

 「社会一般で通用している業種名と、行政上の産業分類とは必ずしも一致していません。例えば、街の電気屋さんが『電気業』と記入することがよくあるのですが、統計上では『小売業』になります。電気業というと、発電事業を行う『東京電力』などになります。ですから、『○△電気店』のように名称を記載してもらうことで、こちらの分類作業がスムーズに進められます」

 分類のために必要とはいえ、会社名までデータとして吸い上げられてしまうなんて……。

 担当者はこう補足した。「記載された勤務先の名称は、あくまで分類の作業の際に使われるだけでその後は消去されます。統計データとしては国には残りません」

 確かに、先述の冊子「調査票の記入のしかた」のなかでも、「分類を正確に行うために記入いただいているものであり、そのまま集計されるものではありません」と記されてはいる。だが「消去される」という文言はなく、これでは「よし、書こう」と思わせるだけの十分な説明とはいえないだろう。

 それにそもそも、会社名を書くことがどんな政策に反映されているのだろうか。

 「雇用の安定や地域活性化を図るための政策の基礎データとなります」とのことだった。もっと具体的な政策でいうと? すると「そこまでは把握していませんが、都道府県や市町村の政策に利用されています」という説明だった。

回答率低調の一因では?

1920(大正9)年に実施された第1回目の国勢調査を国民に知らせるポスター。「正直に有(あり)の儘(まま)を書いて下さい」と記されていた=東京都新宿区若松町の総務省第2庁舎敷地内にある統計資料館で2020年10月1日午後5時14分、生野由佳撮影

 気になる項目がまだあった。住居に関する質問のところだ。マンションの総階数と居住の階を記入する項目があり、これもまた「それって必要?」と思った。

 担当者は「例えばですが、マンションの高層階に多数の高齢世帯が住んでいる場合があります。災害が発生すればエレベーターは止まってしまうので、高齢者の避難対策を定めておく必要があります。国や自治体が防災計画を練る上で、マンションの高層階に住んでいる高齢の世帯がどこにいて、どのように避難誘導するかなどの重要な資料になるのです」。

 これは分かりやすい。必要性は理解できたが、防災対策のためだなんて、取材して初めて知った。同封された資料一式には明記されておらず、通常はここまで想像を広げるのは難しい。

 そもそも国勢調査は統計法に基づくもので、国民には回答の義務がある。国民に義務があるとはいえ、何のために答えねばならないかが分からなければ答えようがない、という側面もあるだろう。

 これらがネックになっているのか、今回の回答率は1日現在で36.2%。5年前の前回の同時期と比べ、7ポイントも低いという。武田良太総務相は2日の記者会見で、「最後まで少しでも多くの方々がこの回答をしていただけるように努力をしていきたい」と強調した。

 回答率が低調である一因には、説明不足があるのではないか。

識者「調査への不満が募れば精度に影響出る」

 統計調査に詳しい埼玉大社会調査研究センターの松本正生教授は「調査に協力しようと思っても、必要性が分かりにくい、とためらう人は多いのではないでしょうか。調査に対する不審や不満が募れば、正確な回答を得られなくなり、精度に影響が出ます。総務省にはもう少し分かりやすい説明が求められます」と指摘する。

 とはいえ、松本氏は国勢調査の重要性をこう説明した。「調査に協力しても、国民は直接のメリットは感じないでしょう。しかし回収率が低下すると、統計の信頼性が揺らぎ、政策策定の基礎データとして質が下がります。つまり間接的に国民にデメリットが回ってくるのです」

 また松本氏は、回収率が低調な大きな理由について、一連の新型コロナウイルスの影響を挙げた。「コロナ禍や首相の交代など多くのニュースの中に埋もれ、国民に浸透していないのでは」と語った。

 さらに、低調である背景としては、コロナ禍の影響によってこれまで主流だった「対面方式」の充実が難しくなっているという事情もある。

 第1回の国勢調査は1920(大正9)年に実施された。以降、長らく国勢調査員が調査の意義を伝える「対面式」が回収などに大きな役割を果たしていた。今回の調査員は前回同様の約70万人を目指していたが、コロナ禍の影響で辞退者が相次ぎ、確保できたのは約61万人だった。これまでは調査員の戸別訪問で説明不足をカバーしていた形だったが、今回は事情が異なっている。

 プライバシー意識の高まりで、急な訪問者には居留守を使う世帯も増えている。コロナの感染防止のため、総務省は対面式ではなく、インターホン越しに調査について説明し、郵便受けに投函(とうかん)する方式も採用しているが、担当者は「対面式を補いきれるものではない」と頭を抱えた。

 繰り返しになるが、国勢調査の回答期限は7日だ。

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