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学術会議任命拒否

日本学術会議が推薦した新会員候補6人を菅首相(当時)が任命しませんでした。異例の事態の背景や問題点を追います。

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#排除する政治~学術会議問題を考える

「自由への侵害」は飛び火する 戦前の大学弾圧事件から考える学問の行方

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滝川幸辰教授の処遇をめぐり、京都帝大総長と文相との協議が決裂したことを伝える1933年5月の毎日新聞記事
滝川幸辰教授の処遇をめぐり、京都帝大総長と文相との協議が決裂したことを伝える1933年5月の毎日新聞記事

 日本学術会議の新会員候補6人が菅義偉首相に任命拒否された問題から、戦前の大学への言論・思想弾圧事件を連想する人は少なくないだろう。日中戦争初期の言論弾圧事件である矢内原事件の実態を描いた「言論抑圧 矢内原事件の構図」などの著書があるニュージーランド・オタゴ大学の将基面貴巳教授(政治思想史)は、今回の事態について「学問の自由を守ってきた堤防が決壊してきている」と警鐘を鳴らす。戦前の歴史から学ぶ、学問の自由の行方は――。【古川宗/統合デジタル取材センター】

説明せぬ政府 権力行使の強引・恣意性

 ――首相による任命拒否をどう見ますか。

 ◆学問の自由という見地からすると、日本学術会議側が新会員を推薦し、それを政府側が自動的に任命するというのは自然なプロセスです。政府は今回、それをものの見事にじゅうりんしているわけで、「非常に粗雑で乱暴なやり方だな」という印象を当初は持っていました。しかしその後の報道で、2016年に既に人事介入の前例があり、18年には法解釈に関して内閣府側から内閣法制局に照会があったことも明らかになりました。学問の自由の侵害に向けて、外堀が知らない間に埋められてきたことが分かり、がくぜんとしています。事態は思っていた以上に深刻だと思います。

 ――そもそも、6人の先生はなぜ任命されなかったのだと思いますか。

 ◆その点に関しては、新聞で報道されている通りだと思います。皆さん、政府の立場に関して、何らかの形で抗議をしている方々で、それが影響しているのでしょう。東京工業大学教授の中島岳志さんが毎日新聞のインタビューで指摘している通り、皆さん決して極端な考えの方々ではない。政治学者の宇野重規さんとは面識があり、日ごろからその発言を注視していますが、激烈な政府批判をしているわけではありません。穏当な発言をしている方を任命しないことによって、政府側は「この程度のことでも問題視されるぞ」というメッセージを間接的に送っている可能性があります。

 ――政府は任命しなかった理由を説明していません。

 ◆そこが、この問題の急所だと思います。要するに、政府側が行動を起こすのであれば、当然説明責任は政府側にある。にもかかわらず政府が一切説明をせず、それを拒絶している。そこに権力行使の…

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【学術会議任命拒否】

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